エンサイドコンサルティング株式会社
代表取締役 友部隆博

公認会計士というお金のプロとして、不動産投資から始めとした資産形成に関わる様々な税金の悩みを解決します。

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日本は累進課税制度を取っているため、収入が増えれば増えるほど税率が上がり、税金も上がります。

そのため、せっかく投資などにより収入が増えたのに、できる限り税金を抑えたいところです。公認会計士である私が正しい節税方法をお伝えしますので、ぜひご参考ください。

1、NISA(少額投資非課税制度)、積立NISA

(1)NISAの仕組みについて

NISAとは、年間120万円までの投資に対して5年間、そこから得られた利益に税金がかからなくなる制度です。

通常は、株式投資をして得た利益や受け取った配当に対して20.315%の税金がかかりますが、NISA口座での運用の場合は非課税となるのです。

NISAを利用するには、金融機関でNISA口座を開設し、そこで投資運用する必要があります。NISA口座を利用にあたり、以下の制限があります。

  • 利用できる期間:2023年まで
  • 口座数:1人1口座
  • 対象利益:配当や売却益が非課税の対象

(2)NISAを最大限に活用するために把握すべき4つのデメリット

一見、メリットが多いNISA口座ですが、メリットを最大限に活用するためには、デメリットを把握しておきましょう。

①投資枠は年間120万円まで

NISA口座での投資の上限額は年間で120万円です。

年間120万円の投資枠を使いきれなかったとしても、翌年に繰り越されることはできないのと、購入した株式を売却しても投資枠が増えることはありません。

売買を頻繁に繰り返す投資を行っている方は、120万円の投資枠がすぐに上限に達してしまい、非課税の恩恵を最大限受けられないでしょう。

②損益通算ができない

NISA口座は損益通算ができません。

普通の口座であれば、例えばA口座で利益が50万円発生し、B口座で損失が50万円発生した場合、利益と損失を合算して「0円」の所得とすることができます。

しかし、NISA口座で発生した損失は、他の口座の利益と合算することができないため、NISA口座を利用したことで、税金がより多く発生してしまう可能性があります。

③5年の非課税期間が終了した時(ロールオーバー)の取り扱い

NISAでは、最長5年間の非課税期間を設けています。

5年経過時の選択肢としては

  • 非課税期間の終了前に売却する
  • 通常の証券口座へ移管する
  • 翌年の120万円の投資枠へ移管する(ロールオーバー)

の3つがあります。

ロールオーバーとは、非課税期間が終了した際にNISA口座で保有している金融商品を翌年の120万円の投資枠に移管することをいいます。

ロールオーバー時に、時価が120万円を超えている場合でも、全額を翌年の投資枠に移管することができます。しかし現状では、NISAの制度が2023年までとなっているので、ロールオーバーが永続的に使えるわけではありません。

(3)損しないためのNISAを活用する3つのポイント

上記デメリットを読んでいただければ分かりますが、NISA口座は使い方を間違えると逆に損をしてしまいます。

以下にて、活用方法を3つ紹介しますので、ご自身の属性に合わせて参考にしてみてください。

①長期的な値上がりと配当を目的とした運用をする

NISAを節税目的で行うことも重要ですが、そもそも投資ということも忘れてはいけません。

市場価額が下落するケースもあります。制度を最大限活用するには、中長期的に値上がりの期待できる金融商品を選ぶと良いでしょう。

②NISAと贈与と組み合わせる

ご家族名義のNISA口座を作って、贈与税の非課税の枠内で運用資金を贈与することで、相続税対策につながります。贈与税の非課税枠は暦年で110万円までです。

③投資のコストを考慮する

NISAの投資対象である投資信託の場合、手数料を十分に考慮する必要があります。

投資信託の投資対象、投資国、運用会社等によって、手数料が異なってくるので、いくら運用成績が良くても手数料が高くなってしまうと資産は思うように増えないので、投資前に十分な検討が必要です。

(4)積立NISAとは?

積立NISAとは20181月から開始した制度で、少額の長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。

積立NISAと通常のNISAの主な違いは下記の通りです。 

  • 投資枠が年間40万円まで(通常NISAは年間120万円まで)
  • 非課税期間は最大20年(通常NISAは最大5年)
  • 株式は購入できない
  • ロールオーバーができない

積立NISAは、これから投資を始める方や、NISAよりもさらに長期的な投資によって資産形成を行いたい方などが向いているでしょう。 

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2、個人型確定拠出年金IDECO(イデコ)

(1)IDECOの仕組みとは?

IDECOとは、個人の掛金によって運用しながら年金を積立て、原則60歳以降に受取る仕組みのことです。

職業によって、最大で月68,000円まで拠出可能(年間816,000円)で、老後の資産形成ができます。

最大拠出額

国民年金

加入状況

職業拠出額の上限(円)年間上限額

(円)

1号被保険者自営業者、アルバイト、学生、無職等68,000816,000
2号被保険者会社員(企業型確定拠出年金無の会社)23,000276,000
会社員(企業型確定拠出年金有の会社)20,000240,000
確定給付年金加入者、公務員12,000144,000
3号被保険者専業主婦(夫)、パート23,000276,000

(2)IDECOの3つのメリット

続いて、IDECOの3つのメリットを紹介します。

①毎年の所得税、住民税を節税できる

拠出金は全額所得控除できます。

例えば、年収500万円の会社員の方が、毎月15,000円をIDECOに拠出すると、年間で約180,000円の節税が可能です。

投資の性質を持ちつつ、高い節税効果を得ることができます。

②運用中に得た利益に税金はかからない

通常の証券口座で運用を行った場合、配当、利子、売却益に対して20.315%の税金が課税されますが、IDECOは、利益について税金がかかりません。

③積立金受け取り時の税金が少ない

60歳になってIDECOの積立金を受け取る時は、一時金か年金受取が選択できます。

一時金を選択した場合は、「退職所得控除」が受けられ、年金受取を選択した場合は「公的年金等控除」が受けられ、ともに税制の優遇を受ける事が可能です。

長期投資すればするほど、税金面のメリットを受けられるのです。

(3)利用する時の3つの注意点

節税対策としても、資産形成としてもメリットが大きいIDECOですが、利用するにあたり注意しなければいけない点もあります。

損しないために、事前に把握しておきましょう。

①原則60歳まで解約できない

老後の資産形成を目的とした制度のため、原則的に60歳未満での中途解約はできません。

資金が固定化されてしまうので、いざという時に自由に引き出すことは難しいでしょう。ただし、拠出金の金額変更はできるので、資産状況に応じて変更を行うとよいでしょう。

②リスク商品による運用なので、元本割れの可能性もある

投資信託による運用のため、拠出額よりも、受け取る金額が少なくなるケースもあります。

③定期的に投資配分を見直す必要がある

IDECOでは投資を行った後に資産配分を変えることができます。

しかし、長期投資のため、つい資産状況の確認を忘れがちになり、意図しない資産配分になることがあります。投資信託のため急激な基準価額の変動は起きにくいですが、年に数回の確認を怠らないようにしましょう。

(4)IDECOを利用するのに適している方は?

どんなにいい商品でも、万人受けではありません。

IDECOに適している方をみてみましょう。

①これから投資を考えている方

これから資産運用を始めたいと思っている方で、老後の資金確保をしたい方は、選択肢の一つとして検討すると良いでしょう。

②長期的に節税のメリットを受けたい人

IDECOは節税効果が高いことが、最大の魅力の一つです。運用の成果がそこまで高くなくても、毎年数万円の節税効果が得られることがあります。運用成果と節税効果の両方を検討すると良いでしょう。

3、法人設立

法人を設立することで節税に繋がることが多くあります。ここでは、個人事業主として事業を行った場合と比較して、法人設立のメリットとデメリットをご紹介します。

(1)法人設立する5つのメリット

まず最初に、法人設立する5つのメリットをご紹介します。

①節税効果が得られる

法人では、課税所得に対して最大約30%の法人税等がかかります。

一方、個人では所得の金額に応じて5%~45%の所得税がかかり、住民税と合わせると最高で55%の所得税、住民税がかかります。

個人差はありますが、年間の所得が500万円を超える場合は、法人を設立したほうが節税できる可能性があります

消費税の支払は、法人、個人事業主共に発生しますが、一定の要件を満たすと、事業開始から最大で2年間、消費税はかかりません。個人事業を2年間営んだ後、3年目から法人として事業を行うことで最大4年間、免税となる可能性があります。

また、生命保険料などは、法人の方が個人事業主よりも経費として認められる範囲が広くなります。

②信用力が高い

法人を設立すると株式会社の住所、代表者、資本金の額、設立日などの情報は開示され誰でも見ることができるので、個人事業主に比べて信用力が高まります。

金融機関から融資を受けやすく、融資額も相対的に高くなる可能性があります。また法人としか取引を行わない企業と取引を行うことができます。

③赤字の繰越が長い

1年間の業績が赤字となった場合、その赤字を翌年以降に発生する所得と相殺できる制度があります。

所得と相殺できる赤字の事を「繰越欠損金」といいます。この繰越欠損金と将来の所得を相殺することで、税金を少なくする事ができます。個人事業主の場合、繰越欠損金が利用できる期間は3年間です。一方、法人の場合は、9年間(平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年)となっており、より長い期間の繰越が認められています。

④決算期が自由に決められる

個人事業主の場合、1月1日から12月31日までの期間が事業年度となりますが、法人の場合は事業年度を自由に設定することが可能です。

通常は3月決算にする法人が多いですが、税務申告の繁忙期と重なり顧問税理士が十分な決算、節税対策を検討してくれない等のデメリットもあります。また消費税の検討、業務の繁忙期、売上の季節変動などを考慮することも重要です。

⑤もしもの時の責任が限定される

株式会社では、仮に事業がうまくいかずに倒産した場合、債務の支払は法人資産、担保、保証の範囲内で行うことになります。

会社の代表者等が債務について保証や担保提供をおこなっていなければ、個人の財産にまで支払い義務は生じません。個人事業主の場合、債務の支払義務は個人の財産にまで及びます。

法人設立時には、日本政策金融公庫の創業融資制度等を利用して原則、無担保、無保証で借入できる場合があります。個人事業主でも創業融資制度は利用できますが、法人で借入をすることで、融資額が多くなったり、金利条件が良くなる傾向にあります。

(2)知っておきたい3つのデメリット

続いて、法人設立のデメリットも知っておきましょう。

①法人設立コスト

まず法人を設立するにあたっては、登録免許税、司法書士に業務を依頼した場合の報酬、印鑑作成費用等のコストが発生します。

株式会社を設立する場合は、最低でも25万円くらいかかると考えてよいでしょう。

②赤字でも税金が発生する

法人は、赤字の場合でも最低年間7万円の税金がかかります(住民税均等割)。

また資本金、従業員数、支店数などによって発生する税金(事業税)があり会社規模などによって税額が大きくなる可能性があります。

③社会保険への加入義務

法人は、社会保険の適用事業所となり社会保険へ加入しなければなりません。

社会保険に加入すると社会保険料のうち半分を法人が負担することになり費用負担が増加します。役員が一人だけの場合であっても、社会保険料の負担は発生します。

(3)法人設立をすべき方とは?

法人設立によってコストが増える、事務手続が煩雑になるといったデメリットがある一方で、節税の効果は大きく、また事業を拡大するために信用を得られることは大きなメリットでしょう。

最初からより組織的な事業活動を行いたい、個人事業主としてやってきたがこれからさらに事業拡大したい方は、法人化により成長のスピードを速くすることを検討すると良いでしょう。

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まとめ

こちらでは代表的な節税方法をご紹介しましたが、ケースバイケースでご自身に合った節税方法について詳しく知りたい方は、ぜひ我々専門家にご相談ください。