不動産投資ローンを借りる際に、ほとんどといっていいほど団体信用生命保険、いわゆる団信への加入が義務付けられています。
この団体信用生命保険(団信)とはいったいどのようなもので、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
また、不動産投資ローンを団体信用生命保険に加入せずに借り入れることは可能なのでしょうか。
こちらの記事では、団体信用生命保険に関して詳しく解説していきます。これから不動産投資ローンの借り入れを予定されている方は、ぜひご一読いただき団体信用生命保険への理解を深めてください。
1、団体信用生命保険とは
団体信用生命保険とは、不動産投資ローンの返済中に借主が死亡したり重い障害を負ってしまったりして返済ができなくなってしまった場合に、ローンの残債を保険会社が不動産投資ローンの融資を行った金融機関に支払ってくれる保険のことをいい、略して「団信」と呼ばれることもあります。
団体信用生命保険には一般団信やワイド団信など、さまざまな種類がありそれぞれ加入条件が異なりますが、加入条件が緩和された団信は保険料が高額になります。
団体信用生命保険を引き受けるのは生命保険会社で、その保険会社には第一生命、住友生命、日本生命、明治安田生命など、ワイド団信はクレディ・アグリコル生命、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命、カーディフ生命などがあります。
auじぶん銀行の不動産投資ローンでは団体信用生命保険の種類を自分で選ぶことができ、auじぶん銀行のように団信の種類を自分で選ぶことができる金融機関は増えてきています。
2、団体信用生命保険の保険料は?
団体信用生命保険の保険料は、太陽生命保険の場合年利0.369%、SMBC信託銀行は保険料を銀行側が負担するため無料など、金融機関により大きく異なります。
団体信用生命保険の保険料が必要な不動産投資ローンは、保険料が不動産投資ローンの金利に上乗せされます。
そのため、利用を検討している金融機関に問い合わせを行うことをお勧めします。
3、団体信用生命保険に入らずにローンを組むことはできる?
団体信用生命保険に加入することなく不動産投資ローンの借り入れを行うことはできるのでしょうか。
完済年齢が高すぎたり、健康状態に問題があり入ることができる団信がなかったりする場合でも不動産投資ローンの借り入れを行うことができるため、結論として団体信用生命保険に入らなくても不動産投資ローンの借り入れを行うことは可能です。
しかし、不動産投資ローンを借り入れるときに団体信用生命保険に入ることを条件としている金融機関が多いため、融資を受けることができる金融機関の選択肢は狭くなってしまいます。
また団体信用生命保険に加入してなかった場合には、借主が死亡した場合や重い障害を負ってしまったときにも、不動産投資ローンの返済を続ける必要があるため、経済的に苦しい状況になってしまうことも考えられます。
4、団体信用生命保険のメリットとデメリット
続きまして、団体信用生命保険のメリットとデメリットを把握しておきましょう。
(1)メリット
団体信用生命保険のメリットは、以下の3つです。
①生命保険の代わりになる
団信は生命保険の代わりになります。
団信に加入しておくことで、名義人が死亡した場合には不動産投資ローンの残債の無い収益物件が遺族に残ります。
この残債ゼロの収益物件から得られる家賃収入から収益物件の維持・管理に必要な経費を差し引いた金額が遺族の手に毎月入ることから、生命保険の代わりになるといえます。
また名義人が重い障害を負った場合にも不動産投資ローンの残債はゼロになるため、家賃収入を生活費や治療費に充てることができます。
②所得税の納税義務がない
生命保険に入っていた場合、不動産投資ローンの名義人が死亡し保険金を受け取ったら、一時所得として確定申告を行い所得税の納付義務が発生することがあります。
しかし団体信用生命保険の場合は、保険料を受け取るのが不動産投資ローンの融資を行った金融機関であるため、遺族の方は確定申告やそれに伴う納税の義務は発生しません。
③金利に上乗せのため年齢や性別によって変わらない
一般的な生命保険は、年齢や性別によって月々に保険料に違いが出てきます。
しかし団体信用生命保険の場合には、補償内容が同じであれば金利に上乗せされる保険料は、性別や年齢によって変わることはありません。
よって、毎月高い保険料を支払うより、不動産投資で団体信用生命保険に加入した方が、万が一な時に備えてローンの残債がゼロになった上に、不動産という大きな資産を残すことができるのも大きなメリットと言えます。
(2)デメリット
団体信用生命保険のデメリットには、以下の4つがあります。
①保険金もらえない
団体信用生命保険は原則として不動産投資ローンの名義人が死亡した場合や、重い障害を負ってしまった場合に不動産投資ローンの残債が無くなるというものなので、名義人や遺族が保険金をもらえるわけではありません。
また、残債が10億円であっても千円であっても補償される金額は残債の分のみなので、返済が終わりに近づくにつれ補償される金額は少なくなり、支払った保険料に比べると低額になります。
つまり、団体信用生命保険は保険は、保険金をもらうのではなく、不動産をもらうと考えた方が分かりやすいと言えるでしょう。
②健康状態によっては加入できないこともある
団体信用生命保険に加入するときには健康状態の告知が義務付けられているため、名義人の健康状態によっては加入できないことが考えられます。
団体信用生命保険に加入できないということは、その金融機関の不動産投資ローンの借り入れを行うことができないということを意味します。
なお、中には加入条件が緩いものもありますが、その分保険料が高額になります。
③所得控除の対象外
生命保険料控除とは所得控除の一つで、支払った生命保険料の金額に応じて一定の金額が保険料負担者(契約者)のその年の所得から差し引かれる制度のことです。
控除を受けることによって、所得税と住民税の負担が軽減されるというメリットがあります。
しかし団信は生命保険控除の対象外となっているので、保険料を支払っていても所得税と住民税の負担の軽減措置を受けることができません。
④完済した場合は掛け捨てとなる
一般的な積立保険は満期になった時、保険金をもらうことができます。また途中解約した場合に、解約返戻金を受け取ることもできます。途中解約の場合は元本割れのケースがほとんどとは言え、一部は返ってきます。
しかし団体信用生命保険は途中で解約することはできず、また何事もなく順調に不動産投資ローンを完済した場合には保険金もありません。
そのため、団体信用生命保険は万が一なときの備えという位置づけで、「掛け捨て保険」と認識しておくといいでしょう。
団体信用生命保険について下記の動画にも分かりやすく解説しています。ぜひご覧ください。