区分マンション投資と比較して、一棟投資物件の魅力はやはりキャッシュフローと言えるでしょう。しかし、区分マンション投資のように、空室リスクを回避するため、複数を持つ場合は部屋の立地を別々に選ぶことができるのに対して、一棟投資物件の場合、立地を変えることができないため、空室対策はなかなか取りづらいものです。
今回はずっと空室で悩まされているオーナーさんからの相談を受け、それをわずか2ヶ月で満室にした相談実例です。空室で悩まれているオーナーは、ぜひこちらの記事を読んで頂けたら嬉しいです。
1、相談結果
今回はご相談頂いたT様は、もともと弊社の別の営業が担当でしたが、その担当営業が退社してしまったため、私に担当引継ぎという形でお会いしました。
家賃の見直し、物件のリフォーム及び広告費の見直しによって、わずか2ヶ月で「満室」になりました。
2、相談した内容
はじめにご挨拶という形でお会いして、いろいろとお話をしていく中で、T様から
「5棟の物件を所有しているのだが、その中の一棟がどうしても賃貸がつかず、収支がマイナス状態が続いている。家賃を下げてしまうと収支がさらに悪くなるため、家賃を下げることは望ましくない。」
と、実は悩みを抱えていらっしゃることを話してくださいました。
3、提案内容
具体的な改善案を出す前に、まずT様が所有している物件の現状分析をさせて頂きました。
(1)現状分析
T様は5棟物件を持っているので、入居率が悪い一棟だけの収支で改善するのはなかなか限界がありますので、5棟全体の収支を把握し、全体の収支バランスを見て必要な改善をすると考えていました。
そのため、以下のような確認作業を行いました。
T様プロフィール
- 年齢:36歳(当時)
- 性別:男性
- 既婚
- 職業:鉄道業
- 年収:1,100万円
①管理状況
T様は、大小合わせて5棟の不動産を所有しており、管理会社はすべて違う会社が行っています。
本業で若くして管理職につき精力的に働いていらっしゃることもあり、物件ごとの空室数こそ把握していらっしゃいますが、それ以上の空室期間、空室対策など詳細情報や対策についてはそれぞれの管理会社様に任せっきりです。
②5棟の収支状況を把握する
それぞれの管理会社から情報を取り寄せて、T様と一緒に5棟全体の収支がどう推移しているのかを、把握することからスタートしました。
■収支状況について
- 稼働率: 5棟のうちの4棟は平均「92~93%」
- 家賃収入:2年間で微増している
- 空室状況:ずっと同じ部屋が空室で、空室期間は平均して10カ月、平均家賃は約4万円、空室数からして「約500万円」の損失をしている
■最も空室で悩まれている物件
- エリア:神奈川県川崎市
- 戸数:10戸(14㎡ロフト付き)
- 平均稼働率:50%
- 想定家賃6.0万円
同じ部屋で空室が続き、その空室期間は平均して10カ月。この物件だけで300万円の損失が出ていました。
■駅徒歩2分なのに、賃貸が付かない原因
管理会社空室対策について問合せをしたところ、実は何も対策をせず以下の理由で放置されていました。
- 家賃が相場よりも高い新築当時のままで設定されていた
- そもそも3部屋は募集されていなかった
- 広告費が設定されておらず、家賃も高かったため、地元仲介会社から顧客への紹介がされていなかった
など。
■他の4棟について
他の4棟については、黒字だけど同じ部屋が空室で1年以上続いている部屋が継続して5部屋ほどあり、中には以前の入居期間が長く、修繕費用が50万円ほどかかるため、放置していたという部屋もありました。
最も空室率が高いの1棟と合わせると合計500万円の損失という計算です。
■対策案
上記の物件の今の状況を踏まえて、T様と
- もし家賃を下げた場合1年で減ってしまう家賃金額はいくらなのか
- 入居者をつけるには、先に修繕を行って、早急にインターネット募集をする重要性
- 広告費の必然性
など、2人でしっかりと原因分析と検証し、
- 周辺相場まで家賃を引き下げ、広告費や修繕費用を捻出する
と対策方針を決定して、すぐに管理会社様に情報を反映していただきました。
4、今の状況
必要な修繕を行った上で、空き物件の賃貸条件も変更してわずか1日で、まず1部屋問合わせと物件案内が入りました。
1か月を経過したところ、3部屋が契約まで至りました。
賃貸管理で重要な「繁忙期」である12月〜3月より前に、打ち合わせを行うことができたことによって、募集条件を変更して2カ月後に、空室をすべて埋めることができました。
5、担当者からの一言
今回、空室をうめるために、T様にとっては広告費やそのままにしてしまっていた修繕費用など、一時的に100万円という大きな出費が発生いたしました。
しかし、全体的な収支で見た際に、空室が続いた場合にT様が回収できなかったであろう損失金額500万円の「1/5」の金額で、空室を埋めることができました。
一般的には複数の物件を所有する場合、管理会社をまとめるオーナーが多いのですが、今回のT様は5物件ともそれぞれの管理会社で、自社が管理していないほかの物件の収支は把握していないこともあり、今回のように空室が続いていたりしても、この物件しか管理していない管理会社からすれば、修繕費や広告費、家賃の件など、さらにオーナー様の収支を悪くするような提案はとてもしづらいものです。
不動産投資をしていると、空室が続くことによる心理的ストレスは相当なものになります。
T様にはほかの物件の運用はうまくいっていたため、こちらの物件の空室改善に一時的な負担をすることを納得してもらい、空室率改善につながりました。