終身保険を探していく中で、「低解約返戻金型終身保険」を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本に保険会社は約40社あり、簡単に分けても1,000種類の保険商品があると言われています。
終身保険の中でも大きく分けると、「終身保険」と「低解約返戻金型終身保険」というものがあります。仕組みが難しいと言われている終身保険ですが、今回は日頃から数多くの終身保険を提案している私が、低解約返戻金型終身保険の仕組み、特徴や活用方法などについてわかりやすくまとめました。
終身保険を検討されている方は、低解約返戻金型終身保険を検討されている方は、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
目次
1、低解約返戻金型終身保険とは
低解約返戻金型終身保険とは、保険料の払込期間も解約返戻金の金額も通常の終身保険よりも低く、その代わりに保険料を割安にした保険です。
保険料の払い込みが終わり数年置いておきますと、解約返戻金は通常の終身保険以上の返戻金となるのが特徴です。
低解約返戻金型終身保険自体は、保険会社によっては設定がない会社もあります。
例えばソニー生命や東京海上あんしん生命などは、通常の終身保険のみになりますが、ひまわり生命の「一生のお守り」「終身保険」といった商品を選べる会社もあります。
また、メットライフ生命ドルスマートのように特則で選ぶことができるケースもあります。
2、低解約返戻金型終身保険のメリット・デメリット
では、低解約返戻金型終身保険のメリット・デメリットとは何でしょうか。
終身保険と比較しながら見ていきましょう。
(1)低解約返戻金型終身保険のメリット
まずは低解約返戻金型終身保険の4つのメリットを見てみましょう。
- ①通常の終身保険よりも保険料が割安
- ②終身で保障が持てる
- ③銀行よりも貯蓄性がある
- ④強制的に貯蓄習慣ができる
①通常の終身保険よりも保険料が割安
低解約返戻金型終身保険は途中解約の際にはほとんど戻ってこないですが、その代わりに月々の保険料の負担が減ります。
例えばメットライフ生命のドルスマートSで低解約返戻金特則を付けた場合と、付けない場合で比べてみました。30歳男性で保障額を10万ドルに設定し払込期間を60歳とした場合、保険料は下記の通りとなります。
- 特則なし保険料:16,006円/月(※1ドル=108.15円)
- 特則あり保険料:14,568円/月(※1ドル=108.15円)
※2020年5月25日の為替レートで試算しました。
月々で見ると、支払い保険料に大きな差はないように感じますが、60歳まで払うとトータルでは「517,680円」の差額も出てしまいます。
ですので、目的をはっきりとさせたうえで加入するのであれば、特徴とマッチするのではないでしょうか。
②終身で保障が持てる
保険期間を終身で持つことができるので、最後まで大事な人に保障を残せるため金銭的な負担を軽減させることができます。
「人生100年時代」の時代背景にも合っていると言えるでしょう。
③銀行よりも貯蓄性がある
低解約返戻金型終身保険は、保険料を満期まで払いきった後に保障として残しておくこともできます。
また、満期後年金として受け取る場合や、解約した際に返戻金を受け取ることも可能です。
その際には商品や契約内容によって異なりますが、自身で払った金額よりも受け取れる金額が上回ります。
商品よっては140%などもあるので銀行と比べると貯蓄性に優れており、通常の終身保険と比べた際にも満期まで支払った返戻金は高くなります。
④強制的に貯蓄習慣が作れる
貯金をしたくても、なかなかできない方もいらっしゃるでしょう。
そんな方は、毎月決まった日に口座から保険料が引き落とすことにより、強制的に貯めるという方法でもあります。
枠を強制的に作ることにより積み立てを行うことができ、無駄な出費も減らせることができます。
(2)低解約返戻金型終身保険のデメリット
それでは逆にデメリットは何でしょうか。
下記の2点が挙げられます。
- ①払込期間中の解約はほとんどお金が返ってこない
- ②流動性が悪い
①払込期間中の解約はほとんどお金が返ってこない
払込期間中に何かしらの理由で解約をした場合には、解約する時期にもよりますが、支払った保険料に対してほとんど戻ってこないと思った方が良いでしょう。
そのため、途中で支払えなくなるようなことにならないよう、無理のない金額で契約することが重要と言えます。
②流動性が悪い
低解約返戻金型終身保険のメリットで銀行よりも貯蓄性があると書きましたが、逆に銀行とは異なりすぐに引き出すことができず、流動性が悪いと言えます。
そのため、急遽現金が必要なときに備えて、ある程度貯金もしておく必要があります。
低解約返戻金型終身保険にはメリットがあれば、デメリットもあります。それぞれについてきちんと理解した上で、加入することを検討するようにしましょう。
3、低解約返戻金型終身保険の活用方法は?
上記のメリットとデメリットを踏まえて、低解約返戻金型終身保険の活用方法について解説していきます。
もちろん個々で目的や目標など異なるので一概には言えないのですが、代表例でお話させていただきます。
世の中には多くの金融商品があり、それぞれの特徴が異なります。その中で保険の一番の特徴はなんと言っても「保障」です。
つまり、低解約返戻金型終身保険の活用方法は、その特徴を活かして保障範囲を選ぶ活用方法です。
一般的な保障範囲は「死亡・高度障害」が多いいのですが、低解約返戻金型終身保険の場合は、介護・障害・三大疾病などの保障を終身で備えることも可能で、尚且つ元気で生き続けた場合には年金の足しにすることもでき、解約した際にはまとまったお金を受け取ることも可能です。
なお、保障額に関してはご自身の将来を描いている家族の人数を基準に考えるといいでしょう。
保険金を相続で受け取ることも想定し、相続税対策を事前に立てることも重要です。保険金を相続するときに残された家族(法定相続人)に対して、一人当たり500万円までの非課税枠があります。例えば将来子供が2人欲しい方でしたら妻、子供2人の500万円×3人の1,500万円の非課税枠がありますので、非課税枠の金額で保障額を設定することにより効率的に受け取ることが可能です。
保険に関する税金について詳しくは下記の記事を参照にしてみてください。
とは言え、実際に世帯主に万が一なことがあった時に1,500万円で足りるの?と思われている方も多いと思いますが、家族構成にもよりますが、遺族年金と合せても足らない家族は多いのが実情です。
従って、子供が独立するまでの間は、低解約返戻金型終身保険の他に、保険料が安い掛け捨ての保険商品と組み合わせて持つことをオススメします。
具体的にはいくらの保障が必要なのかご自身で計算するのはなかなか難しいと思いますので、ぜひ我々専門家に一度相談してみてください。
4、低下約返戻金型終身保険のシミュレーション
では、具体的にある保険会社の商品を用いて、低解約返戻金型終身保険と通常の終身保険の保険料、返戻率などについて比較してみましょう。
(1)比較する前提条件
30歳男性で保障金額を10万ドルに設定して、支払期間を60歳にした場合、低解約返戻金型終身保険と通常の終身保険で比べてみましょう。
(2)通常の終身保険の場合
通常の終身保険の場合は下記のシミュレーションになります。
- 保険料:14,928円/月
- 10年後返戻率:78.7%
- 60歳時点返戻率:105.6%
- 65歳時点解約返戻率:117%
(3)低解約返戻金型終身保険の場合
低解約返戻金型終身保険の場合は下記のシミュレーションになります。
- 保険料:13,326円/月
- 10年後返戻率:61.7%
- 60歳時点返戻率:82.8%
- 65歳時点返戻率:132%
(4)シミュレーションの結果
上記のように比べた際には、払込期間中に解約した場合や払込終了直後は、通常の終身保険の方が返戻率が高いですが、5年間置いたあとの返戻率は低解約返戻金型終身保険の方が高いことがわかります。
月々の保険料も低解約返戻金型終身保険の方が安くなっていますので、65歳以後から受け取り、老後資金として検討されている方には適していると言えるでしょう。
5、低解約返戻金型終身保険を解約したい場合は?
保険は長期間に渡り支払いになる投資商品になります。一括払いした場合はいいのですが、毎月支払いをされている方は、加入時に絶対途中で解約しないと思っていても、長い人生に何が起こるかわかりません。
仮に不測の事態があり、支払い途中にどうしても解約をしなければいけない時はどうすればよいのでしょうか。
状況にもよりますが、基本的には下記2つの方法があります。
(1)払い済み保険に変更する
一つ目は払い済み保険に変更する方法です。
支払った期間や金額によってはできない場合もありますが、払い済み保険に変更することによって、今まで払った保険料分を保障として持つことができ、尚且つ何年もの間置いて解約をした場合には払った保険料を無駄にせずにできます。
(2)解約する
保険料の払込期間が短かったり金額が少なかったりした場合、払い済みができないケースもあります。
その際には解約しかありません。
払込保険料よりも少ない金額になりますが、すぐに解約をして返戻金を受け取ることができます。
少しでも現金を受け取りたい場合は解約手続きを行ってください。
とは言え、払済みにしても解約にしても、損をすることになりますので、最初に保険料を決めていく時に、あらゆる状況を考え支払っていける無理のない金額に設定することにより、大切なお金を無駄にしないで済みます。
生命保険の解約について詳しくは下記の記事を参照にしてみてください。