中古一棟物件投資は、キャッシュフローが出やすいのでご興味を持たれた方は多いのではないでしょうか。
その他にも土地という資産を手に入れるなどのメリットがありますが、物件価格が大きく、また中古で物件の瑕疵(かし)などを気にされている方も少なくないでしょう。
年間200名以上の方に投資プランを提案している私が、中古一棟物件投資で知っておくべき知識をまとめました。
中古一棟物件投資にご興味がある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
1、中古一棟物件投資の融資がかなり厳しくなった?今の融資状況について
(1)融資が厳しくなった
不動産投資は他人資本、つまり融資を活用することによって大きな資産を得ることができることがもっとも大きな魅力と言えるでしょう。
しかし、不動産投資をご検討されている方であれば、不動産投資融資による不祥事によって、実は一番打撃を受けているのは中古一棟投資物件です。
昨年の前半までには、ほとんどの物件がフルローン融資を利用できたにもかかわらず、少しずつ融資が厳しくなり、今だと、きちんと積算価格が出る物件である上に、物件価格の1〜3割前後の頭金を出さないと購入ができない状況になりました。
つまり、中古一棟物件は、自己資金がない、頭金が出せない方には購入が難しくなったことを覚えておきましょう。
(2)積算価格が出る物件は、融資が出る
では、融資が厳しくなったから、もう購入できないのでしょうか?
そういうわけないではなく、きちんと積算価格(土地価格、建物価格)が出る物件であれば、今まで通りに融資を受けられます。
逆に言えば、金融機関はきちんと物件の担保が取れれば融資出してくれるので、金融機関が融資を出す物件であれば、安心して購入できるとも言えるのです。
2、中古一棟物件投資ならではの3つのメリット
現状の融資状況について把握した上で、中古一棟物件投資ならではの3つのメリットをみてみましょう。
(1)新築より割安で購入可能
1つ目のメリットは、なんと言っても新築より割安で購入できることです。
新築物件は、土地価格、建物価格に、人件費や利益が多く乗せられていることから、価格も高く設定されています。それに対して、新築物件の各部屋の家賃も相場より高めに設定されることはよくあります。
これは高くなってしまった販売金額でも、利回りをよくするためです。
一方、中古はまず建物の経年劣化により建物の価格が下がるため価格が安くなっています。
また、売却される中古の投資物件はあくまで現在の家賃収入と周辺物件の相場利回りで売り出しの金額がきまります。新築のように人件費や建築価格といった費用はかからず、買い側も割安感を求めているため、新築よりは利回り高く購入することが可能です。
☆上級者向けポイント☆
ここからは、少し不動産投資上級者向けですが、修繕がされていない物件をあえて購入することで、とんでもなく安く物件購入ができることもあります。
また、そういった物件は空室が多いこともあるので、価格交渉しやすい傾向があり、買い手市場の物件となりやすいのです。
リノベーション会社や管理会社とのやり取りを楽しみながら、賃貸付けができる方にとっては、実質利回り15%以上の不動産を所有することもできる手法といえます。
(2)より希少性の高い土地が手に入る
2つ目のメリットとしては、新築・中古一棟物件投資に共通しているメリットとして、安定した収入と担保となる土地を手にすることができます。
日本では、宅地開拓の制限をすることでインフラを整備し、住みやすい街づくりが行われているため、上下こそするものの土地の価値は一定が維持されやすい仕組みになっています。
土地と言っても様々です。
人気エリア、形がきれい、広い土地というのはすでに所有者がおり、建物がたっていて、利用されていますし、所有者もなかなか手放したくはないものです。
新築一棟投資でよく目にする土地は、少し駅から離れ、土地の形もまあまあ、面積は狭いというものがほとんどです。
一方、中古一棟物件は、当時の地主が資産活用のために建てたものが多くあったりして、土地は広く、RC造や鉄骨で建築されています。土地を持っていた地主だからこそ、土地代がかからないためRC造など建築コストの高い物件を建設できたでしょう。
中古物件でもRC造であれば融資も受けやすく、さらに希少性の高い土地を手にできる可能性が高まります。
(3)収支シミュレーションを立てやすい
3つ目のメリットとしては、中古物件の家賃相場が安定していることから、収支シミュレーションが立てやすいです。
収支シミュレーションを作成する際、以下の情報が盛り込まれます。
- 家賃と家賃下落率
- 修繕費用
- 空室率
- 金利上昇リスク
- デッドクロス
中古一棟物件の場合、「家賃」「空室率」を想定する際、新築一棟物件よりもより正確な数字を使用することができます。
3、注意すべき4つのデメリット(リスク)!その回避策も教えます
続いて、中古一棟投資物件のリスクを見てみましょう。
(1)修繕費用が掛かる
中古物件投資のデメリットで、まず最初に思いつくのが修繕費用です。
一棟物件の修繕は設備や場所によって周期が異なります。
- 室内設備や、外装に関する修繕は大体15年
- エレベーターや受水槽などは20年~30年くらい
など、大規模な工事を必要とします。
「高額な修繕費用がかかった」は不動産投資を始めたあとに、一番多くの方が「失敗した」と思ってしまう要因だそうです。
ここで大切なことは、おそらくほとんどの方が
「こんなに修繕費用がかかると思わなかった」
と思ったのではないでしょうか。
そうならないために、以下の回避策を把握しておきましょう。
☆回避策☆
外装や室内設備など目に見える修繕費用は、ほとんどが単価と工事日数で決まっているということをまず理解しましょう。
修繕履歴と、室内であれば入居期間等を参考にすることで購入前にある程度は予想をたてておくことができます。物件購入と同時に内装・外装業者に関してもある程度目ぼしをつけておくことが大切です。
①業者選びは、価格のみならず
もう少し踏み込んだ話をすると、「単価」は業者によって大きく変わります。例えばクロス(壁紙)の平米単価で過去に一番の低価格はなんと650円/㎡でした。一番高かった業者は1,200円/㎡と、約2倍の差があります。ちなみにこの時は特に高い壁紙を指定したということではありません。
同じ作業でも、業者によってこれだけの差が発生しますが、もちろん、この金額の差は技術と気遣いに差がある場合もあります。
つまり、修繕費用はいい業者をみつけて、味方になってもらうことでかなり納得のいく出費になることがほとんどです。
②自分のニーズに合った業者を選ぶ
また、自分のニーズに合った業者を選ぶことも大切です。
例えば、自分の物件が安さを売りにしているのなら、丁寧な業者より安く早く終わらせてくれる業者を選ぶべきですし、高級さを売りにしているのであれば、追加費用が掛かってもいろいろと提案してくれるような丁寧な業者を選んだ方が結果的にスムーズに作業が終わります。
③水漏れやエレベーターなどの急遽出費はあまりない?
中古物件で大きな費用のかかる水漏れやエレベーターの故障は急に壊れてしまうということはあまりないと考えています。
なぜならば、水漏れは適切な外装修繕が行われていなかったことで発生する場合がほとんどです。一方、エレベーターの故障も、業者からそろそろ修繕しましょうというような前触れがあります。それらについても購入前にしっかりと確認をとりましょう。
(2)融資を有利に受けづらい
銀行が融資金額を決定するとき、積算評価が最も重要です。積算評価では建物評価額が年々下がりますので、築年数が経てば経つほどに銀行の評価も下がってしまい、自己資金割合が上がる可能性があります。
もう一つの条件として、収支を維持するためにはローン年数も確保したいものです。
ローン年数は最長30年~35年で、法定耐用年数―築年数で考えます。
☆回避策☆
中古物件で再融資を受けやすくするポイントを事前におさえておくことが大切です。
- 土地値が高い物件
- RC造などの建物価格が高い
- 自己資金を入れる
- 大規模修繕を行い、ローン年数融資額ともに伸ばす
(3)入居者にも潜在的な問題がある
入居する前に入居者の審査はもちろんありますが、中には様々な理由によって、滞納してしまうケースも考えられます。
長期入居者の中には、本人も連帯保証人も高齢という場合があります。こういう入居者だと安定した家賃収入が入ってくるかが心配になります。
既に入居されている方を追い出すわけにはいかないので、以下の回避策を把握しておきましょう。
☆回避策☆
オーナーになったら、まずは入居者全員に連絡を取ってみて、オーナー負担でもいいので、補償内容が充実した保証会社に加入してもらいましょう。
誰かに対して、お金を請求することや裁判を起こすことは、結構体力を使います。保証会社については滞納保証や、追い出し費用などの負担をしてくれる会社を選ぶことが大切です。
また、生活保護を受けている入居者がいた場合は役所から直接家賃分を入金してもらうよう手続きをするといいかもしれません。
(4)売却できるか
自分自身が融資をうけるときの条件はそんなに簡単じゃなかったのと同じように、自分の次に買う人がどうやって融資をうけるのかを想定する必要があります。
築年数15年以上の物件になってくると、融資がどんどん難しくなってきます。
以下にて例を挙げてみます。
①新築時
- 物件価格:1億円
- 土地の積算価格:5,000万円
- 建物(木造)の建築価格:5,000万円
- 利回り:7%
②築15年後
- 建物の評価価格:ほとんど評価されません
- 土地の積算価格: 5,000万円くらい
- 融資残年数:10年~15年くらい
- 残債:7,000万円
⇒売却希望と実際の購入条件
- 売却希望価格:8,000万円くらい(税金等も加味する)
- 銀行融資額:5,000万円(建物価格はほとんどなく、土地積算価格分のみ)
- 自己資金:3,000万円の拠出が必要
- 利回り・・・??
つまり、融資がおりない分、かなりの自己資金を出すことになり、購入者は相当高い数字の利回りを要求するはずなので、この状態ではなかなか買い手は見つかりづらいでしょう。
では、このようになる前に、以下の回避策を覚えておきましょう。
☆回避策☆
10年以内に転売する予定がある場合、やはりきちんと積算価格が出るRC造の築20年くらいまでの物件を購入したいものです。
しかし、15年以上など長期的に所有していく可能性がある場合、土地値で勝負したい鉄骨造も木造も十分検討余地がでてきます。
出口戦略は、10年単位で将来をしっかりと考えてから検討する必要があります。
4、中古一棟物件の管理は大変?管理上でやっておくべき4つのこと
一棟物件となると、入居人の管理、物件の共有部など管理が大変なイメージを持たれた方が多いのではないでしょうか。
中古となると、備品の交換などもっと大変だと思われている方も少なくないでしょう。
本業がある方は、ほとんどの方は物件の管理を管理会社に任せています。
(1)そもそも管理会社の仕事とは?
まずは、管理会社の仕事を知っておきましょう。
大きく以下のような仕事内容が上げられます。
- 空室が出た時の賃貸募集
- 退去がでた際の敷金精算と同時の修繕発注
- 図面をつくる
- ネットに掲載する(掲載するサイトもいろいろあります)
- 申込者の審査
- 日常清掃
- クレーム対応
- 自然災害時、保険申請の対応
などなどあります。
(2)購入したいエリアが決まっているなら管理会社を見つけておく
管理会社の仕事は、上記で書いたように多岐にわたっていて、得意不得意もありますので、なによりも全ての決定事項についてオーナーは管理会社とやりとりをする必要があります。
なんと言っても、管理会社の良し悪しが今後の賃貸経営を大きく左右し、さらには本業への影響もでてきますので、管理会社は物件購入前に関係づくりをしておくと、物件購入が決まった時、電話一本で光熱費の請求先の切り替えや、前の管理会社との引継ぎ業務を行ってくれますので、スムーズに賃貸経営をスタートすることができます。
☆ポイント☆
管理会社を選ぶときは、自分自身との相性も判断材料するといいでしょう。数年単位にわたるやりとりも楽しくできるはずです。
(3)修繕計画を立てておく
購入したい物件を見つけ時には、実際に物件を見に行く方がほとんどだと思います。
その時、建物の外観などを確認し、大規模修繕がどれくらいで必要かの計画も必ず立てましょう。
大規模修繕の費用を予算に入れておくことはもちろん、その時期を見極め適切な修繕を行うことで、2次災害的な数部屋にわたる水漏れなどを防ぐことに繋がります。
大規模修繕は費用を見積もることができますが、水漏れ等が原因で起こる損害額は予想をはるかに上回ることがありますので、中古物件購入の際には細心の注意が必要です。
(4)入居者に挨拶をし、物件の状況を把握する
賃貸経営の収入を維持することは、なにより今住んでいる入居者に、高い賃料で長く住んでもらうことが一番大切です。
せっかく物件のオーナーになったのだから、今住んでくれている方に挨拶をしてみましょう。(管理会社が挨拶をしてくれる場合もあります)
ある程度長く住んでいる方は、部屋の中で何かしら不具合が発生しているはずです。そこをオーナー側が積極的に修繕をしてあげると、入居者はもう一度入居更新してくれるかもしれません。
この時の修繕で気を付けたいのは、今の入居者が退去したらどうせ修繕する点を重点的に修繕しましょう。
入居者に挨拶することは、外装で修繕が必要なところも教えてもらえる可能性があります。
私が担当していた物件ですが、以前雨戸が一部破損しているから直してほしいといわれ、現地を見に行くと、壁面に負荷がかかっていてこのまま放置すると外壁の修繕も必要になる可能性がありました。
5、中古一棟物件投資に適している方
最後に、中古一棟投資物件に適している方をみてみましょう。
中古一棟物件投資は、新築物件に比べて変化に富んでいます。
その変化を許容し、楽しめる方は中古一棟マンション投資で多くの収益を上げることができるはずです。
昨年前半までには、新築同様希望する融資を受けやすかったのですが、融資が厳しくなってきた今、審査が下りてきたときに自己資金投入を求められる事例も出てきました。
入居者がいるということは、何かしらのトラブルが潜んでいる可能性もあります。買ってすぐに修繕をしなければいけないかもしれません。
これらの変化を受け入れ、柔軟に対応できる方は、中古一棟物件投資に適している方と言えるでしょう。