不動産投資で節税ができるということを耳にされたことがある方も多いと思いますが、その節税に大きなかかわりを持つ制度が今回の記事で解説する減価償却です。
ここでは、減価償却とは何か、減価償却でなぜ節税ができるのか、減価償却の金額の計算方法などについて解説していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、減価償却を利用した節税方法についての理解を深めてください。
目次
1、減価償却とは?不動産投資を行う際に節税との関係性
まずはじめに、減価償却とは何か、減価償却で節税を行うことができる仕組みについて解説していきます。
(1)減価償却とは
物件の建物部分は、築件数が経過するにしたがって資産価値が下落してきます。この資産価値の下落をお金の面から見ていくら下落したか金額で現すしくみを減価償却といい、一年間に下落する金額を損益として計上することができます。これを減価償却といいます。
(2)不動産投資で減価償却が節税できる仕組み
減価償却により物件の建物部分の価値が金銭的に下がっていくと、その分を損益として計上することができることは前述しました。この減価償却により計上できる損益は、実際の支出を伴わない損益であり、これを計上することによって不動産所得が赤字になった場合は、本業の給与収入と損益通算することができます。
これにより本業の給与収入を低く抑えることができるため、支払っている所得税と住民税も低く抑えることができ、節税を行うことができます。
2、減価償却の計算方法
減価償却期間は、建物の構造により異なります。住居の場合、骨格材肉厚が3mm以下の場合は19年、木造は22年、重量鉄骨の場合は34年、鉄筋コンクリート造と鉄骨鉄筋コンクリート造の場合は47年となっています。
これを法定耐用年数といい、「普通にメンテナンスを行いながら使用を続けた場合に新築の時からこれだけの年数は利用可能」と法律で定められた年数のことです。しかし、減価償却期間は新築物件と、中古の減価償却期間時の物件、中古の減価償却の期間が切れた物件でそれぞれ計算方法が異なります。
ここでは、鉄筋コンクリート造の1億円で購入した物件を例にとって解説していきます。
(1)新築の場合の減価償却費
新築物件の場合、減価償却費は「建物価格×償却率」で求められるので、
100,000,000円×0.022=2,200,000円
となり、築年数に合った償却率にて47年の間この金額を損益として計上することができます。
(2)中古物件(築年数が法定耐用年数以内)の減価償却費
築年数が法定耐用年数以内の中古物件の減価償却費は、
減価償却期間=(法定耐用年数―経過年数)+(経過年数×20%)
で求められるため、築15年の物件を購入した場合には、「(47年-15年)+(15年×20%)=35年」が減価償却期間となります。
この数字より「100,000,000円×0.029年=2,900,000円」となり、35年の間この金額を損益として計上することができます。
(3)中古物件(築年数が法定耐用年数を超えている場合)の減価償却費
築年数が法定耐用年数を超えている中古物件の場合、
減価償却期間=法定耐用年数×20%
となるので、「47×20%=9.4年」となりますが、小数点以下は切り捨てなので、減価償却期間は9年となります。
減価償却費は、「100,000,000円×0.112年=11,200,000円」となり、9年間この金額を損益として計上することができます。
3、法人の場合は任意償却を行うことができる
不動産投資を個人ではなく法人化して行っている場合には、任意償却を行うことができます。
任意償却とは、法人税法で定められている限度額を超えることがなければ、限度額の範囲内で減価償却費を自由に決めることができるということです。
4、減価償却を行うと売却時に譲渡税が高額になることもある
減価償却を行うことで、物件を売却したときに譲渡税が高額になることがあります。ここでは譲渡税とはどのようなものかといったことや、その計算方法、物件を売却したときに譲渡税が高額になるパターンを解説していきます。
(1)譲渡税とは
譲渡税とは、不動産を売却した場合に不動産に関わる譲渡所得として課税されます。この不動産に関わる譲渡所得には、他の不動産所得や給与所得などとは分けて個別に計算され、譲渡税が課税されます。これを分離課税といいます。
分離課税は給与所得などのように、所得金額に応じて税率が変わることはなく、決まった税率で税金が課せられます。
譲渡所得は、「譲渡収入–(取得費+譲渡費用)」で計算することができます。
(2)譲渡税の税率
譲渡所得の税率は、その物件を所有していた期間によって異なります。所有期間が譲渡する年の1月1日の時点で5年以下の短期譲渡の場合、39.63%(所得税30.63%・住民税9%)となります。
所有期間が譲渡する年の1月1日の時点で5年以上の長期譲渡の場合、20.315%(所得税15.315%・住民税5%)となります。
(3)減価償却により譲渡税が高額になるパターンとは
物件を購入したときの価格で売却すれば、利益が出ないため譲渡税は必要ないのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際には物件の価値は購入時より資産価値が下がっているので、購入時の価格で売却すると利益がでるとみなされるために譲渡税が発生します。
譲渡所得の計算は「譲渡収入–(取得費+譲渡費用)」から求められることは前述しましたが、この取得費は建物など減価償却の対象となる資産の場合、購入時の金額から減価償却した金額を差し引いたものになります。
減価償却を行うことで物件保有時の節税を行うことは可能ですが、売却を行う際には多額の譲渡税が発生する可能性があるということになります。物件を所有し続け長期に渡り家賃収入を得ることを目的とするのではなく、売却を考えている場合には、減価償却による節税と売却の際に発生する譲渡税のバランスをよく考えておくことが重要です。
5、減価償却を行っても節税できない人もいる?
減価償却により節税を行うことができる理由は、減価償却費という実際の支出を伴わない経費を計上し、本業の給与収入と損益通算して不動産会計上の赤字を給与所得で相殺するため、給与所得が圧縮されこれに課せられる所得税と住民税の負担を軽くするということです。
そのため不動産経営を本業としている専業大家の方は、圧縮するべき給与所得がないため減価償却による節税を行うことが難しいでしょう。
減価償却を利用して節税を行うことができるのは、本業を持ち給与所得を得ている人であるということを覚えておきましょう。
不動産投資の節税の仕組みについて、詳しくは下記の記事をご参照ください。