不動産投資を行うときは、収支シミュレーションが欠かせません。
一般的には不動産投資は5年以上と長期的に所有する投資商品です。長期的に所有するからこそ、購入後に得られる家賃収入から、物件にかかる税金、抱えている残債への返済、管理費などの諸経費から差し引いたあとに得られる利益はいくらなのか、きちんと試算する必要があります。
また、所有している期間中に、築年数が古くなるにつれ家賃の減少、空室率などのリスクを考慮して、収支シミュレーションをしていくことが大切です。
長期間に所有していれば、いいことも悪いことも起きますから、購入前に予測できることはすべて予測しましょう。
そこで今回はシミュレーションを作成する時のポイント、注意点、シミュレーションツールなどについて書いていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
1、一棟投資物件の収支シミュレーション作成時のポイント
一棟投資の場合、建物だけではなく土地も関係してきます。把握しなければいけない情報が非常に多くなりますので、収支シミュレーションするにあたって、なによりも物件について知ることが大切です。
具体的には下記のような情報が挙げられます。
(1)購入金額
一棟投資物件の購入金額には、売買価格だけではなく
- 建物
- 土地
との内訳も把握するようにしましょう。
(2)購入時にかかる諸費用
物件を購入するときに、物件本体の価格の他に
- 印紙
- 仲介手数料
- 不動産取得税
- 固定資産税・都市計画税の清算金
など諸経費と呼ばれているお金もかかります。その金額も明確に把握しましょう。
(3)土地の特徴
一棟投資物件の場合、例え建物が古くなり評価が出なくなったとしても、土地の価値は必ず残ります。また、様々な条件によって土地の価値も変わりますので、土地についてもきちんと把握してください。
土地の形、接道状況、隣地との境界線、再建築の際の制限など、できる限り細かく情報を得るようにしましょう。
(4)建物の広さと構造
建物の広さ、構造が木造なのか、コンクリートなのかを把握すれば、大規模修繕費用の予測が可能です。
一般的には一棟物件の場合、築10年前後で大規模修繕が必要と言われていますので、その費用もきちんと収支シミュレーションに入れましょう。
(5)レントロールと各部屋の間取り、入居期間
現在の家賃、部屋の間取りと今までの入居者の入居期間がわかることで、家賃下落と空室率が予想しやすくなります。
(6)周辺物件で類似した物件の家賃相場を徹底的に調査
ある程度築年数が経っている物件は、レントロールの履歴などで家賃の動きが分かりますが、新築、築浅の物件は、履歴が少ない分、周辺エリアで似たような条件の類似物件の家賃相場を徹底的に調査するようにしましょう。
(7)修繕履歴
過去に修繕履歴がある物件は、その際にかかった修繕金額を知ることによって、これからの修繕計画が立てやすくなります。
(8)固定資産税とその評価額を確認
減価償却費用の計算に必要な情報になるので、固定資産税の評価額を確認してください。
一棟投資物件は、同じような条件の物件がほとんど存在しないと言えるでしょう。
従って、一棟物件の購入を検討する際の収支シミュレーションも、その物件に関する情報をどれだけ入手できるかがポイントとなります。新築や築浅の物件ならいいのですが、築年数の古い物件は、物件に関する資料が少なくなる傾向がありますので、購入時もっと慎重になりましょう。
2、区分マンション投資の収支シミュレーション作成時のポイント
区分マンション投資でも、その物件に関する情報をできる限り入手しましょう。
(1)購入金額
区分マンションの場合も、土地と建物と割合がありますが、土地は共有持分のため、占める割合が非常に少ないので、物件の売却価格は建物と認識していいでしょう。
(2)購入時にかかる諸費用
区分マンションも一棟物件と同様、物件の売却価格の他に
- 印紙
- 仲介手数料
- 不動産取得税
- 固定資産税・都市計画税の清算金
など諸経費と呼ばれているお金もかかります。
(3)家賃、間取と入居期間
物件の現在の家賃、間取り、今の入居者の入居期間を確認しましょう。
特に今の入居者が長期入居の場合、入居期間中にずっと部屋のクリーニングを行っていないため、退去される際に、リフォームが必要など大きな出費があることを想定しましょう。
また、入居期間が長いと、再度入居募集をするとなると、当時の家賃相場ではなく、現在の家賃相場になるため、家賃が下がる可能性もあることを想定しましょう。
(4)管理費、修繕積立金
区分マンションの場合は、修繕は管理組合がすでに計画を立てていますので、その計画を確認しましょう。場合によって、修繕の費用が足りず、修繕積立金が増額される場合もあります。その予定があれば記載されますので、必ず確認してください。
(5)周辺家賃相場を確認
同じ間取り、最寄り駅からの距離がほぼ同じ、区分マンションの場合は類似物件が多く見つけられるため、とにかく検索して比較する物件を探すようにいましょう。
その際、かなり古い物件までも確認してください。そうすると購入予定の物件をその築年数まで持った場合、出口戦略として売却する時の価格の想定ができます。
(6)周辺エリアで売りに出されている物件の売買金額を確認
購入予定物件の売買価格の適正を確認するため、家賃と同様に、同じような条件の物件を多く探しましょう。
区分マンションは一棟投資物件と異なり、似たようなスペック、間取りなど同条件の物件が多く存在します。
区分マンション投資の場合、利便性の高い最寄り駅から近ければ近いほど良くて、人気のない駅や駅から離れてしまっている物件は、投資物件としては不向きということになります。
収支シミュレーションを行う際に、周辺に似たような物件や、将来予想対象となる築古の物件が少ない場合は、(もちろん例外はありますが)その時点で、その物件を投資物件としての購入を見直してみることをオススメします。
3、シミュレーション作成時の注意点
収支シミュレーションを作成する際は、上記で書いたような情報を正しく調べて、適正な数字を使用することが大切です。
例えば、「家賃は一律5%下がる」というような目安な数字を多くの記事で目にしますが、それ以上空室率が出た場合、収支が赤字に転じるというリスクが考えられますので、ざっくりした数字で試算するのではなく、物件ごとにきちんと調べた数字を使用しましょう。
なお、業者から収支シミュレーションを出してもらうことが多くあると思います。その場合、1つ1つの数値について確認をし、疑問に思う数字がありましたら、納得するまで確認するようにしてください。
4、不動産投資シミュレーションツール
続きまして、収支シミュレーションを行う上で、様々なデータを参考になるサイトと、便利なツールをご紹介します。
(1)参考データを調べるサイト
先に参考データを調べるサイトをご紹介します。
①全国地価マップ
URL:https://www.rakumachi.jp/property/investment_simulator
一棟物件の購入を検討している場合は、全国地価マップを使用して路線価と公示地価を調べることが出来ます。
②keisan
URL:https://keisan.casio.jp/menu/system/
毎月のローンの支払金額とその内訳を簡単に計算することができます。
③Home’s賃貸経営
URL:https://toushi.homes.co.jp/owner/
周辺相場や駅の特徴、空室率がとても見やすくなっており、そのまま周辺物件の詳細情報を取得できます。
(2)収支シミュレーションツール
様々な情報がそろったら、早速シミュレーションしてみましょう。
①IRRによる不動産投資収益計算Excelシート(Lite版)
URL:https://www.vector.co.jp/soft/
基本的な利回りから、減価償却、税金、細かな修繕管理費まですべてを網羅するために作成されました。
不動産投資の初心者よりは、大手仲介業者や、ファンド関係者など業者に愛用されている無料シミュレーションシートです。
②GATE. 投資シミュレーション
URL:https://gate.estate/features/simulation
ネット上の40,000万件にもおよぶ物件情報をもとに、気になる物件を選ぶだけでシミュレーションを行ってくれるツールです。
購入予定の物件と似た条件の物件を見つけて、シミュレーションしてみるのはいかがでしょう。
「不動産投資は気になる。でもまだ購入は早いかな」という方にとっては、1つ勉強ツールとも言えます。
③楽待 CF(キャッシュフロー)シミュレーション
URL:https://www.rakumachi.jp/property/investment_simulator
楽待の物件情報は別にして、CF(キャッシュフロー)シミュレーションは使いやすいシミュレーションツールと言えます。
手軽なシミュレーションでありながら、税金も考慮したキャッシュフローシミュレーションを行うことが出来ます。
5、不動産投資シミュレーションアプリ2選
最後に、不動産投資シミュレーションアプリをご紹介します。
(1)不動産投資!利回り収益計算機
URL:https://itunes.apple.com/jp/app/
購入したい不動産の簡単な情報を入力するだけで、投資利回りを確認することが出来ます。
まず初めに確認したい情報をサクッと確認できるため、とても便利です。
(2)一棟買いLite
URL:https://itunes.apple.com/jp/
減価償却費などを考慮したり、税引き後キャッシュフローを簡単に知ることができるアプリです。その結果をグラフ化してくれるため、購入後のお金の動きも確認できるのが特徴です。
ちなみに、有料版を購入すると、会計損益部分もしっかりと確認することができます。