不動産投資には様々な都市伝説的な説が存在していますが、本当にそうなのでしょうか。
先日のPar1に続き、不動産投資業界に伝えられている都市伝説的な説を徹底解説する第2弾です。
今回は上場会社の新築業者で長年講師を勤めていた経験がある私が、新築物件に関する都市伝説に迫ります。
果たして嘘か真か…?
ぜひ最後までお付き合いください。
目次
1、新築業者は利益が大きく、広告費用が大きいから高い?
まず新築業者は何故新築を建てるのか?そこから考えてみましょう。
理由は下記の二つが挙げられるのではないでしょうか。
- (1)利益が取れる
- (2)一元管理ができる
私も以前は上場している新築ワンルーム業者で長年講師をしていたことがありますが、自分の経験上ではこの2つが理由であると言えます。
(1)利益が取れる
当然ですが業者側にメリットがなければ、新築を建てて販売しようとはしないでしょう。
では利益が取れるというのはどういう仕組みなのでしょうか。
一般的な中古マンションは、仲介または売買ともに「相場価格」というものが存在します。例えば相場2,000万円の中古マンションを、3,000万円で販売しようとしても無理があります。
当然ですが銀行は融資してくれませんし、購入者からは敬遠されますので適正価格で販売する必要があります。
ところが、新築は業者が設定予定の家賃で金融機関から融資評価をもらうことができ、価格を自分たちで設定しています。
業者によっても多少違いますが、新築ワンルーム一部屋の建物代金はおおよそ1,200万円〜と言われています。まとめて材料などの仕入れをしていますので、原価を低くおさえることができます。
金融機関の評価方法の一つ、収益還元法を逆手に取ったやり方で価格を設定するため、価格の約25%~35%が利益と言われています。
私も土地活用プランナーとして新築業者と土地情報のやり取りをする際に、この新築利益分を省いて計算して、業者側に提示していたくらいです。
そこから広告費や人件費などを差し引くので、実際の純利はもう少し下がる計算になります。
新築業者が新築を建てて販売したがる理由がうなずけるのではないでしょうか。
(2)一元管理ができる
もちろん理由2つ目の「一元管理が出来る」という部分も業者側にはメリットがあります。
まとまった管理手数料が大きく入ってくることと、情報把握しやすいという利点もあります。
また上場企業になれば、社員数も多くなるため人件費がより大きくのしかかってきますし、一斉販売するため広告でタレントを起用するなど、何かとコストがかかるため、当然ですが価格にその分を乗せなければなりません。
企業ですから、利益があることは重要なので否定はしませんが、中古マンションは相場価格があるのに対して、新築マンションは相場価格で判断するのはなかなか難しいと言えるでしょう。
2、新築プレミアムの謎~買った直後から値下がりするってホント?
こちらもよく耳にする「新築は買った直後から値下がりする」という説です。
この都市伝説的な話は本当なのでしょうか。
前述したように新築時は広告経費や企業利益が上乗せされているため、個人が買った後は中古扱いですから、新築プレミアムはなくなり価格は相場になります。
ただ極端に下がるという訳ではなく、立地や需要、賃料によって変わります。
新築時と同じ賃料が取れていて、尚且つ人気の立地であれば金融機関の評価も高いままなので、大きな値下がりにはつながりません。
ただほとんどのケースで購入後に売ろうとしても新築時の価格より下がる場合が多いようです。
新築は業者と金融機関が価格を決め、中古は価格相場と金融機関が価格を決めることが多いのです。
それぞれにメリットとデメリットがあり、ご自身の投資目的に合わせて選ばれるといいでしょう。
3、新築物件は賃貸募集の落とし穴?サブリース契約は良くない?
最後に新築物件の賃貸に関する都市伝説です。
まず新築物件で重要なのが、完成月です。
「完成年ではなく、完成月?」と思われたのではないでしょうか。
そうです、完成年ではなく「完成月」が重要なのです。
新築は売主側の販売供給の都合で建設されることが多く、完成月は物件によってさまざまです。
それが何に影響を及ぼすかと言うと、賃貸の募集や設定家賃です。
それは新築の最初は一斉募集だからです。賃貸には繁忙期と閑散期と呼ばれる時期があります。
1月~3月など、卒業入学、就職、転職などで人が多く動くタイミングを賃貸不動産の繁忙期と言われています。
そのため、築年ではなく築月が重要なのはここです。
繁忙期の1月~3月に完成した新築マンションは募集が比較的簡単ですし、強めの家賃設定でも良い場所でグレードの良いマンションはバンバン決まっていきます。
ところが真夏や秋など、人がほとんど動かない時期に建てられたマンションは最初の一斉募集にかなり苦戦します。
その結果、新築マンションなのに相場より安い賃料で募集することもあります。
私が実際経験したのは総戸数100戸を超えるワンルームマンションで、閑散期に完成した物件の時は、全然入居が決まらずに約半年募集に費やしていましたし、決まった賃貸も、当初の設定賃料と全然違った家賃になっていたことがありました。
そして一度走り出した賃貸物件の家賃を一気に上げていくことは至難の業となります。
中古マンションの場合は、10年20年と貸し続けていることで、比較的繁忙期に入居者の出入りが偏ってきますので、大きな心配はいらないでしょう。
さらに新築マンションの業者は借り上げ契約、いわゆるサブリース契約を勧めてくることが多々あります。
これは業者が一元管理しやすいのと、仮に賃料が高く取れたとしてもオーナーには一定額を支払えば、残りはサブリース業者側の利益になります。
さらにサブリース契約は売却時にマイナスになることがあります。
それは多くの買取り業者が賃貸を自社管理もしたいし、金融機関の評価も取りたいため、相場より安い賃料になってしまっているサブリース契約がマイナスになるからです。
そのため、買取り業者が嫌がるところありますが、個人に売却する時は特に問題ないと言えます。
中には解約をするのに半年も要する契約書になっている場合や、サブリース業者側の都合で賃料を改定できたり、解除したりできる内容の契約も多いので注意が必要です。
とは言え、長期に渡り安定した家賃収入を得たい人は、きちんとサブリースの仕組みについて理解しうえでのご利用を検討頂ければと思います。サブリースについて詳しくは下記の記事を参照にしてみてください。
新築物件の購入をご検討される場合は、時期によって賃貸の募集状況・賃料設定・契約形態が異なる為、築年数よりも完成月を確認するようにしましょう。