不動産投資を行うときには、物件購入前に事前調査を行うことが重要です。
販売図面だけでは分からない情報もたくさんあり、事前調査を行わずに収益物件を購入すると、不動産投資に失敗するリスクが非常に大きくなってしまいます。
不動産投資の成功の可否は、この事前調査に掛かっているといっても過言ではありません。
ここではなぜ事前調査を必要とするかといったことから、事前調査のチェックポイントまで詳しく解説していきます。
ぜひ最後までお読みになり、事前調査を行う際の一助として頂ければ幸いです。
1、事前調査の意味と行う理由
事前調査とは物件の正確な情報を、物件に関する書類を調べたり実際に現地へ足を運んだりして、購入予定の物件の正確な情報を購入前にできるだけ多く収集することを目的として行います。
不動産会社が提供してくれる情報だけで十分なのではないかと、思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです。
不動産会社の情報だけでは物件の詳細な情報を得るには不十分なので、購入前に事前調査を行う必要があります。
2、事前調査を行う際のチェックポイント
事前調査は書類上の調査と、実際に現地へ赴いて行う調査の2種類があります。
ここでは、それぞれのチェックポイントについて解説していきます。
(1)書類で行う事前調査のチェックポイント
書類で行う事前調査のチェックポイントには、以下のようなものがあります。
①購入物件の情報
まずは、購入を検討している物件の情報を入手します。
法務局へ行き、登記事項証明書を発行してもらいましょう。
登記事項証明書の発行は誰でも行うことができ、申請書と印紙代があれば30分ほどで発行されます。印鑑や身分証明書は必要ありません。また、法務局の各種証明書請求手続 からもダウンロードすることができます。
この登記事項説明書には、物件の所在地、番地、取得原因、家屋番号、種類、抵当権が設定されているかどうかといった情報が記載されています。
また、地積測量図と建物図面も入手しておくとよいでしょう。
地積測量図からは土地の形状や面積、建物図面からは建物内部情報や正確な寸法を得ることができます。
②路線価
路線価は、固定資産税の納税証明書に記載されています。
おおよその実勢価格は「路線価÷0.7」程度なので、この計算式を使って現在の販売価格が適正であるかどうか調べてみましょう。
また、固定資産税の納税証明書には毎年納めるべき固定資産税の税額が記載されており、この固定資産税もランニングコストとして必要になるのでチェックしておきましょう。
固定資産税の納税証明書は売り主側が用意するものなので、仲介を依頼する不動産業者の担当者に見せてもらうようにしましょう。
③物件の間取りの調査
購入を検討している物件の間取りや、水回りなどの設備を確認しましょう。
築年数が古い物件によくある和室や3点ユニットバスルーム、バランス釜の風呂などの入居者に敬遠されがちな間取りや設備であった場合、リフォームが必要になることもあります。
不動産業者の担当者に間取り図を見せてもらったり、設備について質問したりしておきましょう。
また、今までの修繕履歴、リフォームなどを実施したか、何を実施したかも合せて確認しておきましょう。
④物件周辺環境の調査
物件の周辺状況の調査も重要です。
14条地図または公図を利用して、周辺の商業施設や教育施設、郵便局や銀行、駅までの距離などを調べておきましょう。
14条地図と公図は、法務局に出向く方法と、インターネットを利用する場合にはサービス概要|登記情報提供サービスを利用する方法のどちらかで取得することができます。
また、市区町村が発行するハザードマップを見て、物件が災害に弱い土地に立っていないかも確認しましょう。ハザードマップは物件がある市区町村役場の窓口やインターネット、ハザードマップのポータルサイトから入手できます。
周辺環境を調べるために、Googleマップやストリートビューを活用することもお勧めします。
⑤事故物件ではないか調べる
事故物件とは、一般的に入居者が亡くなる場所となってしまった物件を言います。
それ以外にも何らかの事件が起きて、被害者がその物件で亡くなった、遺体の保管場所にされていたなどの理由で事故物件とみなされることがありますが、事故物件の定義はしっかりと定まっているわけではありません。
しかし、事故物件は「心理的瑕疵あり」または「告知事項あり」の物件とされ、不動産業者に告知義務があるとされています。
どのような事件を「事故」とみなすかはあいまいなので、物件の仲介をしてくれる不動産業者の担当者にしっかりと確認しておきましょう。
また「大島てる」というウェブサイトがあり、ここには事故物件が掲載されています。
大島てるには誰でも情報を投稿できるため、すべての情報が確実なものであるとは言えませんが、一度検索して物件が事故物件ではないか確認することをお勧めします。
⑥収益調査
不動産投資を行う物件を購入するにあたって、その物件でどの程度の収益があげられるのかは非常に大きなポイントとなります。
そのため利回りを不動産業者から提示してもらうのですが、この時の利回りはほとんどの場合表面利回りです。
表面利回りとは、「年間家賃収入÷物件購入価格」の式で導かれる数字のことで、物件の維持・管理に必要な費用は想定されていません。そのため、実際に必要な経費を加味した実質利回りで物件からあげられる収益を予測しておくことが大切です。
実質利回りは、(年間家賃収入―年間経費)÷(物件購入価格+購入時諸経費)の式で導かれます。
利回りについて詳しくは下記の記事を参照にしてみてください。
また、実際に不動産投資の利回りはいくつ必要なのかについて、疑問に思われている方も多いです。下記動画にて解説していますので、ぜひ合せてチェックしてみてください。
⑦物件の入居状況
購入予定の物件の現在の空室状況や、どのような入居者が入っているかということを管理会社に確認します。
その際にその入居者の入居期間も確認しておきましょう。なぜならば入居期間が長い場合は、当時の家賃は今の家賃相場と乖離するケースが多く、もし今の入居者が退去したときの家賃相場で収益を計算する必要があります。
また、今までの空室率もチェックしてみてください。空室率を把握できれば、物件の賃貸ニーズも把握できます。
⑧物件が不正利用されていないか
購入予定の物件が反社会勢力の事務所として使用されていたり、違法な民泊として利用されたりしていないかを管理会社に確認する必要があります。
不正利用があった物件の評価が落ちますので、必ず把握しておきましょう。
(2)現地での調査
続きまして、現地での事前調査のチェックポイントをみてみましょう。
①周辺環境の調査
事前に14条地図や公図で周辺環境を確認しても、実際の雰囲気や治安状況は現地に行かないと確認することができないため、この点も調査が必要です。
周辺ににおいや煙などを出す工場や、騒音を出す高速道路や線路などがないかをチェックします。
また治安状況の確認も非常に重要です。昼間と夜の雰囲気がガラリと変わる場所も少なくありません。
人通りの少ない荒れた公園がないかといったことや、街灯の数が少なすぎないかということ以外にも周辺のコンビニのトイレが自由に使えるかということをチェックすることもおすすめです。
コンビニのトイレが「ご自由にお使いください」となっている場合には、周辺の治安状況が良好であるケースが多いためです。
②近隣住民や地元不動産業者への聞き取り調査
近隣住民や地元の不動産業者に、周辺の治安状況や家賃相場、空室率の聞き込みを行います。
この時に、今後の大規模商業施設の移転など価値の高い情報を得ることができることもあります。
区役所に開発予定などを調べることもできますので、調査するといいでしょう。ただし、中には何十年にも渡って未だに実施されていない開発計画は、あまり期待できないと言えるでしょう。
③物件設備の調査
物件の共有部分や管理状況の調査を行います。チェックポイントは以下の通りです。
- 外側から見た物件の劣化具合、外壁のクラック、バルコニーの裏側や廊下の淵部分のコンクリートの割れアドがない
- 躯体そのものの劣化具合から破風の劣化がわかる
- 物件が平成以前に建築されたものである場合、水道管が鉄管の場合赤水が出る可能性があり、大規模修繕を行う必要があるため物件購入後に大きな出費が必要になることもある
- 廊下や集合ポストなどの共有部分がきちんと管理されているか
- エレベーター、貯水タンクの共有部分のメンテンナンス具合と必要になる費用
3、事前調査なしで物件を購入するとどのようなリスクがある?
事前調査なしで収益物件を購入すると、家賃下落リスク、空室リスク、流動性リスク、価格変動リスクが大きくなります。
周辺環境が変化したり、物件の劣化が進んだりすることでこれらのリスクは上昇するため、リスクを低く抑えるために、入念な事前調査を行うことは非常に大切です。
不動産投資のリスクについて、詳しくは下記に記事を参照にしてみてください。