ご自身でこれから会社を設立されようとしている方も、既に会社を設立されている方も、会社の登記簿とオーナーさんご自身の個人の住所氏名との関係をお考えになったことがあるのでしょうか。
近年、会社の登記で様々な改正が行われていました。どんな時にどのような書類が必要になるのか、きちんと把握されているオーナーさんも多くないのではないでしょうか。
そこで今回は、会社の登記において、オーナーさんの個人情報が必要となってくる3つの場面を解説いたします。ぜひこちらの記事で一度おさらいしてみてはいかがでしょうか?
目次
1、会社を設立する時は「実質的支配者の申告」
会社を設立しようとする際、会社を支配する個人を把握することにより、会社の透明性を高めたり、暴力団員などによる会社の不正使用やマネーロンダリングを防いだりするために、法律が改正されて「実質的支配者の申告」は必要な手続きになりました。
(1)実質的支配者の申告とは?
平成30年10月12日に改正された「公証人法施行規則第13条の4」により、公証人は、株式会社、一般社団法人及び一般財団法人の定款認証の際に、定款の認証を受けようとする者から、法人成立時の実施的支配者となるべき者の氏名等並びに、その者が暴力団員及び国際テロリストではないかどうかを、申告させなければならないことになりました。
なお、公証人の定款認証を受ける必要のない合同会社のオーナーさんは、実質的支配者の申告をすることはありません。
(2)実質的支配者とは誰のこと?
設立する会社の議決権の総数の50%を超える議決権をもつ個人、つまり株式会社のオーナーさんのことを「実質的支配者」といいます。
なお、50%超をもつ個人がいない場合は、25%を超える議決権をもつ個人全員が、実質的支配者となります。
(3)実質的支配者はどんな個人情報が必要なの?
住所・氏名・よみがな・国籍・性別・生年月日・議決権割合・暴力団員等ではないことを申告します。
- 運転免許証
- パスポート
- マイナンバーカード
- (外国人の場合)在留カード
等のいずれか1点のコピーを本人確認資料として提出します。
公証人は、申告された内容につき、データベースにより、暴力団員等ではないことをチェックします。
2、会社が商業登記する時に本人確認証明書が必要
商業登記規則等の一部を改正する省令により、平成27年2月27日から、
- 株式会社
- 一般社団法人
- 一般財団法人
- 投資法人
- 特定目的会社の役員
の登記申請の添付書類として、本人確認証明書が必要となっています。
株式会社の設立のときと、株式会社に新しく取締役、監査役が就任するときに、本人確認証明書を提出する必要があります。「新しく」ですので、重任(再任)のときは、必要ありません。
また、印鑑証明書を提出するときには、重ねて本人確認証明書を提出する必要はありません。
実在しない架空の人物を役員とすることを防いだり、勝手に役員として名前を使用されたりすることを防ぐために導入されました。
なお、役員変更のときは「就任・退任の本人確認証明書」を提出する必要があります。
3、役員が就任するとき、本人確認証明書を提出する必要がある
役員就任する時の本人確認証明書として、何を提出すればいいでしょうか。
- 住民票
- 戸籍の附票
- 運転免許証の裏表コピーをとり、本人が「原本と相違がない。」と記載して、記名押印したもの。
- マイナンバーカードの表面のコピーをとり、本人が「原本と相違がない。」と記載して、記名押印したもの。
上記書類のいずれか1点が必要です。
法務局の登記官は、役員の就任承諾書に記載された住所・氏名が、本人確認証明書の住所・氏名と合致するかどうかをチェックします。
4、代表取締役が退任するとき、本人確認証明書を提出する必要がある
法務局に印鑑を提出している代表取締役(会社の印鑑証明書が発行される代表取締役のことです)が退任するとき、本人確認証明書を提出する必要があります。
代表取締役自身が知らないうちに、勝手に代表取締役の登記を変更されること(会社の乗っ取り)を防ぐ目的です。
ですので、平取締役や監査役が辞任するときには不要ですし、代表取締役が任期満了によって退任するときも不要です。
5、代表取締役が辞任するとき、本人確認証明書を提出する必要がある
辞任届に、辞任する代表取締役が個人の実印を押印し、個人の印鑑証明書を提出します。
法務局は辞任届と印鑑証明書の陰影を照合します。
代表取締役が辞任届に、今まで法務局に届出ている印鑑(会社の実印)を押印すれば、本人確認証明書は不要です。会社の実印は、その代表取締役が管理しているものだから、会社の実印が押印してあれば、会社ののっとりではないだろうと推認されるためです。
また、法務局は、届出された会社の印鑑の記録をおこなっているので、会社の実印が辞任届に押してあるかどうかは、法務局登記官が陰影を照合することができます。
6、商業登記法改正によって「株主リスト」は必須になった
平成28年10月1日以降、株式会社、投資法人、特定目的会社の登記の申請に当たっては、添付書面として、「株主リスト」が必要となっています。
これは、株主総会議事録の偽造等により不実の登記がなされることを防止したり、後日、株主総会決議による登記変更が行なわれたことについて紛争がおこったときの証拠のひとつとしたりする目的で、商業登記規則61条2項・3項の改正が行なわれたことにより必要となった書類です。
(1)いつ株主リストを提出するの?
株式会社の登記を変更するとき、株主総会決議(株主全員の同意)が必要な変更の場合には、株主リストは必ず提出します。
代表取締役が単独でできること(例えば、役員が引っ越して住所の変更がおこったのでその変更登記をする 等)や取締役会だけでできること(定款に別段の定めがない会社で、自己株式を消却したので、発行済株式数の変更登記をする 等)の場合以外は、原則必要ということになります。
(2)株主リストには何を書くの?
株主リストには
- 株主の氏名又は名称
- 住所
- 株式数(種類株式発行会社の場合には、種類株式の種類及び数)
- 議決権数
- 議決権数割合
を記載し、代表取締役が証明する記名押印(法務局に届け出ている会社実印)をします。
注意点としては、
- 令和○年○月○日付の株主総会であるか?
- 証明日はいつであるか?
などに気をつけましょう。
(3)株主リストに書かなければいけない株主は誰?
では、株主リストに書かなければいけない株主とは誰でしょう。
下記株主を書くようにしましょう。
- 議決権数上位10名
または
- 議決権割合を多い順に足していって3分の2に達するまでの株主
に該当する株主全員を書きます。どちらか少ないほうで構いません。
注意点としては、自己株式等で議決権を行使できない者は除いてください。
なお、同順位の者が2以上の場合もよくあることかと思いますが、同順位の者は全員書きます。
また、株主全員の同意が必要な変更の際には、株主全員を書きます。
まとめ
こうして3つの場合をみてみると、近年たてつづけに、会社の登記における本人確認に関する改正が行なわれていることが分かりますね。
何年か前に自分で会社の手続きをやってみたけど、今回はどうなのだろう?というオーナー様や、ご自身のケースはどう考えたらよいか分からないというオーナー様も、会社の登記の専門家の司法書士に、一度、ご相談されてみてはいかがでしょうか。