Pocket
LINEで送る

不動産投資は、借り入れをしてレバレッジを利かせることは最も大きなメリットと言えます。しかし、普段馴染みのないアパートローンを実際に借りるとなると

  • 金利はいくつなのか
  • いくら借りられるのか

この2点について気になる方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

リーマンショックの影響も一息ついた2011年からアパートローンの残高は2016年まで右肩上がりに伸びていました。

その背景には、20131月に発表した「2015年に相続税負担が増える」のと「2016年のマイナス金利政策の実施」がサラリーマン大家の増加を後押ししていたのは間違いありません。有名企業に勤めていれば、最短1週間で億単位の融資が受けられる時期が続きました。

2017年に入ってから、伸び続けていたアパートローンの新規貸し付け金額は減少し、多くの方がご存知なシェアハウス事件の影響もあり、2018年はさらに融資金額は減少し、投資家がのぞみ通りの融資を受けることはいい物件を探すことと同じくらい難しい時代になりつつあります。

今回は年間12億円の融資を通したが、厳しくなりつつある融資状況を分かりやすくお伝えし、不動産投資をスタートするうえですぐに実践できる有利な融資を引っ張るための方法を解説していきます。 

1、不動産投資ローンの種類 

まず最初に、不動産投資ローンの種類を説明していきます。 

大きく、アパートローンとプロパーローンの2種類があります。

(1)アパートローン

不動産投資が一般的になり始めた時と同時に、メジャーになった不動産投資ローンのひとつです。アパート経営をするためにパッケージ商品として作られました。

融資基準がほとんど一定で、その金融機関の求める属性のお客様であれば、決まった金利・融資年数で融資を受けられます

一般的には、不動産業社が提携している金融機関はこのアパートローンで融資付けを行います。パッケージローンとも呼ばれます。個人名義で融資を受ける場合に多く利用されていますので、ほとんどの場合、「団体信用生命保険」がついています。 

①メリット

メリットとしては、審査項目が少ないことから審査期間がとても早く、承認が下りるまで1週間程度と考えておけばいいでしょう。

つまり、本人も準備する資料がとても少なくて楽に融資が進む場合がほとんどです。

デメリット

一方、デメリットとしては「一定基準を超えれば融資を受けられる」というのは、「基準以上に属性が高くても、融資条件は変わらない」ということになります。 

金融資産がある代表者よりも、年収の高い会社員の方が好まれます。また、属性によって金利やローン年数が変わることは基本的にありません。

団体信用生命保険の仕組みについて、詳しく下記記事を参照にしてみてください。

団体信用生命保険とは?不動産投資で活用する時の3つのメリット

また、団体信用生命保険を活用することによって生命保険が不要になるメリットもあります。下記動画にて解説していますので、ぜひ合せてチェックしてみてください。

(2)プロパーローン

プロパーローンは、事業経営者のための融資です。 

不動産投資では法人所有、もしくは地主など経営者としての資質がある方かどうかがみられます。 

①メリット

メリットとしては、家族構成、金融資産、経営者としての資質など、アパートローンでは加味されない内容が審査の重要な判断事項となりますので、勤務形態等関係なく融資の申し込みができ、選べる金融機関の幅がとても広がります。属性によっては金利も1%を切るくらいまで下げることも可能です。

また、決算報告書等の提出により、不動産経営状態が健全と判断されれば、追加融資を受けられる可能性が高いです。

②デメリット

アパートローンと違って、金利とローン年数はあらかじめ決まっているものではありません。物件と融資を依頼したお客様の属性によって決めていきます。 

そして、団体信用生命保険は基本的につきません。法人で保険に入る等の対策を取る方もいます。 

また、配偶者等の連帯保証を必須とする場合もあります。 

2、不動産投資ローンは厳しくなった?!―最新の金融機関情報―

続いて、最新の金融機関情報について書いていきます。

ここでは、一棟マンション投資と、区分マンション投資をわけてご説明します。 

(1)区分マンションの最新融資情報

実は区分マンション投資に関しては、今までと変わらず融資がされています。 

その理由は、 

  • 融資の規模が小さい
  • 東京都内や大阪の主要駅付近など人口を保つという視点においてエリアが限られている
  • 商品としての流動性が高い
  • 銀行が負うリスクが低い

と挙げられます。今後も変わらず融資がおこなわれると考えられると言えるでしょう。

なお、コロナの影響で融資の審査が厳しくなったと言われていますが、属性がクリアしていれば今まで同様に融資を受けることは可能です。最新の融資状況について、下記の記事を参照にしてみてください。

新型コロナの影響で不動産投資ローンはどうなる?最新融資事情について

(2)一棟物件投資の最新融資情報

一方、一棟物件投資は、どの銀行も厳しくなっていて、さらに今後も一層厳しくなると言えるでしょう。

何より、金融庁が厳しく目を光らせているからです。頻繁に日経新聞に銀行の不正を言及するような記事が掲載され、不動産投資で融資を受けることを考えている人は、ドキドキさせられています。

今では一棟の融資条件は評価が出る物件である以上、頭金3割が必須条件として出ています。要は属性がよくても、自己資金出せない方はなかなか厳しいでしょう。

ここまで自己資金が必要となると、あまりメリットを感じず、複数の区分マンションを所有する方が増えているそうです。物件の複数所有について詳しく下記の記事を参照にしてみてください。

区分投資マンションは複数所有すべき?プロがメリット・デメリットを詳しく解説

3、不動産投資ローンの審査基準とは?金融機関がみる5つの条件

では、具体的に金融機関が不動産投資ローンの審査基準はなんでしょう?

ここで、金融機関がみる5つの条件をご紹介します。

(1)勤務先など

結果から申し上げますと、金融機関は上場企業勤務の方を融資相手として好みます。 

銀行が融資の審査を行う際に、その人の専門は何で、どのような経歴を辿ってきたのかなどを確認しますが、上場企業などで勤務をしているということは、その企業に入社する際に、厳しい入社基準をクリアしているという判断ができます。

従って、銀行の方にいちいち会社の説明をしなくても、HPや帝国データバンクを見れば経営状態は一目瞭然ですので、その会社に勤めているだけで、高評価をもらいます。 

一方、勤務先がそこまで有名でない場合は、企業のプレゼンからスタートする必要があるかもしれません。代表者の方は、決算報告書を提出し経営状態の健全性を証明する必要があります。

(2)収入

2つ目は稼ぐ能力を証明する「収入」です。 

よくご年収700万円以上という言葉を聞きますが、これは銀行が一棟物件投資に対する融資を行う際に設けている年収です。 

2016年の国税庁「民間給与実態統計調査」のデータよりますと、年収700万円以上の人数は全体の約13%、1,000万円以上に絞るとなんと4%しかいません。 

一棟投資物件の価格は、1億円以上を超える物件はよくあります。金融機関はお金を貸すにはかなりリスクをおうことになりますので、ちゃんと回収ができるように、融資基準を厳しく設けていると言えるでしょう。

また、借り入れの際には返済比率も関係します。年収の加減を定めていない銀行でも返済比率は必ず計算していますので、ベースとなる年収がある程度高くないと、大きな借り入れは難しく、小ぶりな物件しか購入ができないです。

(3)金融資産とその背景

「頭金ゼロ円でも不動産投資ができる」という営業トークを聞いたことがある方も多いと思いますが、これは頭金出さなくてもいいですが、持ってなくてもいいということではないこと誤解しないでください。

なぜならば、金融機関は融資を審査する時に金融資産、基本的には現金化できる資産を必ず見ています。それに、多ければ多いほど好まれます。

金融資産の判断基準は、お客様の資産と負債のバランスをみています。借り入れ額に対して、不動産そのものの価値とお客様の金融資産が上回っているべきと考えている金融機関がほとんどですので、金融資産が多いほど、選べる物件、選べる金融機関が増えます。 

また、不動産投資では突発的な出費が発生や賃貸付けがうまくいかない時もありますが、金融資産があれば銀行への返済が滞ることは考えづらいでしょう。 

最近、金融資産の水増しされていたことが問題となりましたが、実際には金融資産がなかったことにより顧客がサブリース解除後、投資家が一時的に返済ができなかったという事件もありましたので、今後は銀行側からより多くの資産の提示を求められる可能性もあるのではないでしょうか。

(4)家族背景

金融機関が家族背景を見る理由としては、先に述べた3つのポイントの裏付けのためと考えます。

例えば、ご両親が資産家であった場合、融資を希望する方が将来的に相続をする可能性や、また子供に当たる本人も今後も資産を積み上げていくことができると予想します。 

また、同じく30歳前後で融資の審査の段階で金融資産がギリギリな状況でも、結婚して子供がいる人の方が、まだ結婚していない人より、融資が通りやすいでしょう。

その理由は、結婚されてお子さんがいる人は、住む場所、働き方、結婚式代や出産費用など、金融機関はそれらの変数は少ない方がいいと考える傾向があります。

また、パートナーがいる場合はその人の同意があるのかどうか、年齢が高めの方が融資を考えた時は、後継者の面談もあります。

融資を受けた本人に不幸があった場合でも、不動産と借金はそのままです。金融機関は家族構成などもしっかりとみる必要があるのです。 

(5)不動産投資事業の事業計画性

この物件を購入することによって、 

  • しっかりと収益を生むものであるのか
  • 賃貸付けは問題ないのか
  • 修繕計画はあるのか
  • 物件の積算額はしっかりあるのか
  • 周辺の売買事例と大きな差はないか

など、上記内容をしっかりと金融機関に伝える必要があります。 

ここに上記4つの審査条件を足して、銀行担当者は作文を書いてくださいます。

銀行によって、または担当者によって得意なエリア・物件があると言われています。初めて物件を持ち込んだとき、その特徴はなかなかつかめないので、いつもより念入りに事業計画所を作成することで、毎日多数の融資を取り扱う銀行員へ本気度をアピールできるはずです。

なお、プロパーローンで融資を受ける時は、融資条件は厳しいので、金利は低い銀行を選ぶ時などは、自分自身でかなり綿密に調査し、事業計画性をしっかりとアピールする必要があるでしょう。

とは言え、初めてのことでいきなり自分から銀行に交渉するのはやはりハードルが高いので、その場合、専門家に相談してみましょう。  

4、実際に融資を活用した3つの物件を購入した実例 

最後に、3つ実際に融資を活用して物件を購入した実例をご紹介します。

(1)55歳のサラリーマンの方が1億3,000万円の物件を購入

55歳という少し年齢が高めな方が、13,000万円の物件を購入することができました。

①オーナーさんの属性

  • ご年齢:55
  • ご年収:1,250万円
  • 勤務先:上場IT企業
  • 既婚
  • 金融資産:3,800万円
  • 物件所有情報:自宅
  • 残債:なし

②購入した物件の情報

  • 金額:13,000万円
  • エリア:さいたま市主要駅徒歩12
  • 建築年数:28
  • 融資金額:13,000万円
  • 金融機関:地方銀行
  • 自己資金:350万円 諸費用分拠出
  • 融資年数:27
  • 金利:3.3
  • 利回り:8.2

(2)32歳のサラリーマンの方が17,800万円の物件購入

続いて、32歳の方が17,800万円の物件を購入した実例です。 

①オーナーさんの属性

  • ご年齢:32
  • ご年収:1, 120万円
  • 勤務先:金融関係勤務
  • 既婚
  • 金融資産:1,500万円
  • 物件所有情報:なし
  • 残債:なし

②購入した物件の情報

  • 金額:17,800万円
  • エリア:大阪府北部駅徒歩23
  • 建築年数:26
  • 融資金額:18,000万円
  • 金融機関:地方信金
  • 自己資金:拠出なし
  • 融資年数:31
  • 金利:2.5
  • 利回り:9.2

(3)43歳のサラリーマンの方が22,500万円の物件購入

最後に、2億以上の物件を購入した方の実例をご紹介します。

①オーナーさんの属性

  • ご年齢:43
  • ご年収:2,300万円
  • 勤務先:会計士
  • 既婚
  • 金融資産:6,500万円
  • 物件所有情報:自宅
  • 残債:5,000万円 

②購入した物件の情報

  • 金額:2億2,500万円
  • エリア:板橋区
  • 建築年数:22
  • 融資金額:2500万円
  • 金融機関:地方信金
  • 自己資金:2,000万円
  • 融資年数:35
  • 金利:1.9
  • 利回り:6.8

あなたにおすすめの専門家

小嶋 啓一(こじま けいいち)

■ 所属会社
K’S Signature株式会社
■ 担当エリア
全国
■ 担当分野
海外不動産投資 投資全般のコンサルティング

自らが日本と米国で不動産を主体とした資産形成を個人・法人で行い、その経験を通じてお客様にベストな選択肢を提供します。

中山 隆弘(なかやま たかひろ)

■ 所属会社
新百合ヶ丘総合法律事務所
■ 担当エリア
全国
■ 担当分野
弁護士

新司法試験に全国最年少で一発合格。不動産案件・相続案件をメインに、法律相談、交渉、裁判を問わずスピーディーかつ適切な対応させて頂いています。

石田 渉(いしだ わたる)

■ 所属会社
株式会社Core Management
■ 担当エリア
栃木 埼玉 千葉 東京 神奈川 名古屋 大阪
■ 担当分野
保険商品

年間「300人」以上提案。お客様の資産背景、家族構成、投資目的など様々な条件から、保険、不動産投資など様々な投資商品と組み合わせたトータルコンサルティングをさせて頂いています。

まとめ

先日、2011年以降上がり続けた一棟マンションの利回りが初めて3ヶ月連続で下落したという記事が出ていました。未だに融資を行ってくれる金融機関は多く存在していますが、顧客に対してはより高い属性を、物件に対してはより高い利回りを求められています。 

昨年までは、金融機関側も「借りてください!!」という姿勢が見受けられました。現在は「しっかりと返済できる人には貸しますよ。」というスタンスに変化しています。

ぜひ、専門家の力を借りて、しっかりしたと事業計画をもとに有利な条件で融資を受けて、不動産投資にチャレンジしていきましょう。