不動産投資は不動産という高額なものを買っての投資ですから、リスクも大きくなります。
融資を活用して不動産投資をスタートできるのはメリットですが、空室が続いたり、修繕などで費用がかさんだりで、返済ができず、自己破産まで陥った人もいます。
では、不動産投資で自己破産にならないよう、どのような注意点があるのでしょうか?
不動産投資に失敗しないために把握しておくべきポイント、また、万一失敗した時の対応方法を含め解説します。ぜひ最後までお読みください。
目次
1、不動産投資で自己破産を防ぐには?自己破産に追い込まれる理由
不動産投資に失敗して自己破産をしないために知っておくべきことは、まずその投資に利益がきちんとでるのかを見定めることが必要です。
以下不動産投資に失敗する理由3つを紹介します。
(1)収益に対する見通しが甘い
不動産投資に失敗する人に共通することは、収益に対する見通しが甘いことです。
不動産投資とは、不動産をもとにした「賃貸経営」をすることです。経営ですからきちんと売り上げと経費の概念を持つことが大切です。
また不動産に対する税金や法令、近隣の賃貸事情に精通している必要があります。
(2)リスクに対する見通しが甘い
不動産投資は通常長い期間でもって利益をはかります。
そのため回収までにどのようなことが起こりうるかを、念頭において判断することが必要です。
メリットばかりに目がいくのではなく、空室が続いたり、修繕で大きな出費があったりなどうまくいかない時のリスクを事前に把握し、回避策を立ててリスクを最小限におさえることが重要です。
(3)営業トークを鵜呑みにしていた
- 「まだ決まらないんですか?」
- 「いつまでもグズグズしてても決まりませんよ!」
- 「知識なんてなくても大丈夫!私がフォローしますから!」
営業マンにこういわれて、なんか自分がばかにされたような気分になってつい売買契約書に印鑑を押してしまったという方もすくなくありません。
下記にて営業トークの代表的なものをあげてみましょう。
①不動産投資で所得税の節税ができる
まず所得税の節税ができるのは、赤字になることが前提です。
この仕組は損益通算を活用することです。要は不動産所得で赤字になった場合は、給与所得などの所得と通算して、本来の所得を下げることによって、税金還付を受けることです。
本来であれば投資なので、赤字は損をしてしまうことになりますから、ここはきちんと理解しておく必要があります。
②不動産投資は保険の代わりになる
不動産を購入する時に銀行から借入れをすると「団体信用生命保険」に加入することがほとんどです。
この団体信用生命保険は借りた人に万一のことがあったときに、保険会社から返済してもらう保険のことです。
しかし、生命保険と違うのは、融資の残債がゼロ円になり、不動産の借り入れはなくなりますが、保険金が手元に入るわけではありません。
本来の生命保険のように保険金が欲しい方には向いていませんが、現金で相続するより不動産で相続した方が、税金が安くなるメリットがあるのと、不動産を売却して収益を得ることができます。
要は、このメリットは何を言っているのか、それは自分が求めているモノなのかをきちんと理解することが重要です。
③高利回りの物件だから必ず儲かる
「必ず」や「絶対」をよく言う営業マンには、注意して冷静に判断してください。
なぜならば、どんな投資にもリスクはつきもので、絶対という保証はどこにもないからです。
しかし、不動産投資の場合は、リスクを事前に把握することができ、回避策を立てることでそのリスクを最小限におさえることができます。
高利回りの物件はなぜ高利回りなのか、その理由を明確に把握することが重要です。
④サブリースで家賃保証するので安心できる
サブリースとはサブリース会社がその物件を一括して借り上げして、相場家賃の80%前後を、空室も関係なく毎月賃料を所有者に支払う契約のことを言います。
空室期間も家賃をもらえるのは安心ですが、相場より低くなっているのと、サブリースは期間が定められていて、その期間満了のときに継続の条件として物件の補修をすることになったり、サブリース料が引き下げられたりします。
また中にはサブリース会社そのものがなくなったりすることもあります。
よって、サブリースを利用する必要があるのか、リース会社を選ぶことが重要と言えます。
なお、サブリースについては新しく改正されましたので、詳しくは下記の記事を参照にしてみてください。
2、不動産投資で失敗しないための注意点
(1)不動産投資の収益率を理解する
不動産投資で失敗しないためにはまず、収益率を正しく計算する必要があります。
収益率とは、投資した金額に対してどのくらい利益がでるかを数値化したものです。
不動産投資における収益率には、表面利回りと実質利回りの2つの数値があります。
(2)収益率の計算方法は2通り
表面利回りの計算は次の計算式で行います。
①表面利回り
表面利回り=年間家賃収入÷物件価格×100
ここでの年間家賃収入は満室で計算されることが多いことに注意が必要です
②実質利回り
実質利回りは、表面利回りがその物件に係る経費を考慮していないのに対して、実際に必要な経費を考慮に入れてより現実の利益に近づく計算です。
計算式は次のようになります。
実質利回り=(年間家賃収入-年間経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100
家賃収入を得るために経費が必要ですから、経費分を差し引いて利益率を求めます。より正確に収益率を計算することができます。
利回りについて詳しくは下記の記事を参照にしてみてください。
なお、不動産投資においては投資する目的によって、利回りに対する認識が異なりますので、下記動画にて分かりやすく解説していますので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。
③アプリやシミュレーションサイトを活用する
収益率を計算するのに、初心者ではなかなか難しい面があります。
そこで簡単にシミュレーションをしてくれるアプリやサイトを紹介します。
- IRRによる不動産投資収益計算Excelシート(Lite版)
不動産投資をするうえでの利回りや税金、維持費用などいろいろな情報を入力してシミュレーションできるフリーのエクセルシートです。
- 楽待
物件価格や構造等を入力するとシミュレーションをしてくれるサイトです。
- アパート一棟買いlite
収益率の計算から融資条件を入れたシミュレーションまでできるアプリです。なお、iPhoneのみでandroidアプリはないようです。
- 東急リバブル収益シミュレーション
不動産仲介大手の東急リバブルが運営しているサイトです。諸条件を入力してシミュレーションができます。
(3)不動産投資をする前にできる限りの確認をする
①物件価格の正当性
不動産会社の営業トークにのせられることなく、果たして物件価格が正当なのかを自分で判断しなければなりません。
そのためには、実際に販売に出されている情報サイトに掲載されている物件情報は重要な情報源になります。
国土交通省でも不動産取引価格の情報を公開しているので、ぜひ参考にしてみてください。
また、REINSなど今までの取引実績を公開しているサイトもありますので、業者専用のサイトであるため、担当者にデータを出してもらうようにしましょう。
②物件の収益率
前の項で紹介した計算方法やサイトまたはアプリなどを利用してしっかりと実際の収支がどれくらいなのかを把握しましょう。
③自己資金などの資金計画
自己資金が多いほど収益率の計算上利益があがりますが、自己資金をほとんど使ってしまうと補修費等の不意の出費に対応できないおそれがあります。
自己資金と借入れのバランスを考えましょう。
④融資時の金利などの条件
不動産投資にあたって、借入れする場合の利息は収支に重大な影響を及ぼします。
利用する金融機関によって金利が異なる場合が多いので、できれば複数の金融機関にあたり有利な金利で運用したいものです。
初心者の方はご自身での選択が難しいケースも多いので、業者の提携ローンを利用するのも一つの選択肢と言えます。
⑤近隣の家賃相場など物件の賃貸需要
購入物件の近隣の家賃相場を予め調べておくことも重要です。
サイトや物件近くの不動産会社あるいは新聞広告や折り込みチラシの情報も参考になります。
高すぎれば賃貸契約を解約されるおそれや、値下げ交渉をされる可能性もありますし、安すぎれば目に見えない問題が潜んでいる可能性があります。
⑥入居者の状況
例えば購入物件を1社だけが社宅などとして借り上げているような場合には、解約されるとダメージが大きくなります。反面その会社がずっと契約をしてくれるなら安定した収益が見込めます。
また、できれば賃借人の収入や職業、年齢等が把握できれば家賃収入の見通しが立てやすくなります。
⑦管理費など必要な固定費用
不動産会社に賃貸契約をまかせる場合には、一定の管理費が必要になり、定期的な補修費もかかります。
定期的な補修を怠り物件の状態がよくないと、なかなか借り手があらわれず不動産経営を圧迫するおそれがあるため、定期的な補修も必要経費だと念頭に入れておきましょう。
⑧不動産投資で節税ができる仕組み
不動産を購入した場合に売買代金全額が一度に経費になるのではなく、年々減価償却をして減価償却分が経費となります。
減価償却費は構造等により耐用年数が定められているので、耐用年数に応じて計算されます。
減価償却をすることによって、実際にお金が出ていくことはないけれど、帳簿上は経費として計上できるお金があるので、結果として節税できることになるのです。
ただし、築年数が経って減価償却が終わってしまうと、経費として計上できる金額が減るので所得額が増えて税金が増えてしまう結果になります。
不動産投資の減価償却について、詳しくは下記の記事を参照にしてみてください。
(3)不動産投資のリスクを把握する
①空き室の増加リスク
不動産投資は家賃収入で利益を上げていきますので、空き室が多くなればそれだけ利益を圧迫します。
近隣の家賃相場からあまりにも高ければ解約リスクは高まります。
しかし、補修がきちんとされていたり、設備を流行りにしたり、ペット可にしたりなど入居者が気持ちよく生活できる環境であれば、少々家賃が高くてもそのまま継続する可能性が高いといえます。
②家賃の値下げリスク
物件の築年数が古くなるにつれ、空き室増加のリスクと同じく家賃の値下げリスクが高まります。また、近隣の相場が影響します。
また物件の状態が悪くなれば、値下げを要求されるか、退去を考えられてしまうおそれがあります。
よって、住心地のいい部屋、きちんと管理をされている部屋など、満足度の高い物件であることが重要です。
③家賃の滞納リスク
不動産投資で利益をあげるためには家賃収入は重要です。
家賃滞納があっても、裁判をしてもすぐには賃借人に出て行ってもらうことはできません。
大体の場合少なくとも6ヵ月の滞納が解約するために必要とされています。また、このように滞納がある賃借人の場合のほとんどが未納の家賃を回収できずに退去してもらうことになります。
月々の家賃の支払い状況に注意して、管理会社に委託していれば督促をお願いしましょう。
また、家賃の滞納リスクを減らすためには、保証人にきちんとした収入がある人になってもらうこと、また今では家賃の保証会社がありますからこちらの家賃保証会社を利用することも考えてみましょう。
④返済期間中の金利上昇リスク
現在のところ日銀の低金利政策によって固定金利でも、変動金利でもかってないほどの低い金利で借り入れができます。
しかし、この政策がいつまでも続く保証はありません。
固定金利にする、万が一金利が上昇しても返済ができる余裕のある返済プランを立てるなど、対策を立てることが安定した経営に役立つといえるでしょう。
不動産投資のリスクや回避策について、詳しくは下記の記事を参照にしてみてください。
また、下記動画にて分かりやすく解説していますので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。
3、万が一不動産投資で自己破産したらどうなる?
破産とは会社や個人が、支払いができなくなったときに、裁判所が債務者の財産を処分してすべての債権者に公平な分配をすることと、債務者の経済的な再生を図ることを目的にした制度を言います。
(1)そもそも自己破産とは?
破産は裁判所に対して破産の申立を行なうことで開始します。
債権者が申し立てる場合を「債権者破産」債務者が自分で申し立てを行なう場合を自己破産と言います。
自己破産を申し立てる目的はこの免責を受けることで、裁判所が免責を許可する決定をすることで免責されます。
免責が許可されることによって、今までの借金などの債務を支払う責任から免れることになります。
(2)自己破産すると制限されることは?
①資格を制限される
資格の制限には2種類あります。
一つは破産することによって復権するまでの間当然に資格に基づく仕事ができなくなるタイプです。弁護士や司法書士、税理士また警備員や宅地建物取引主任士等の資格がこのタイプです。
もう一つの保険外交員の場合は、保険会社が保険外交員の登録を抹消するまで資格を使って仕事をできるタイプになります。
②委任契約が当然に解約になる
会社の取締役と会社は委任関係にあるとされていますので、破産の時に会社の取締役であった人は当然に取締役の地位を失います。
しかし、その後の株主総会によって新たに取締役に選任されることでまた取締役の地位につくことができます。
③破産手続き中は自由に住所を変えることができない
住所を変えるには事前に裁判所の許可が必要です。
ただし、連絡がとれなくなると手続きが進まなくなるための処置ですから、特別な事情がなければ許可されます。
④破産手続き中の郵便物は破産管財人に転送される
郵便物が転送されてその内容も破産管財人にみられてしまいます。
その他選挙権などは制限されることなく、生活に必要なものまで全て破産によって失うことはありません。
(3)自己破産以外の債務整理の方法は?
①任意売却
任意売却とは法的な手続きで強制的に売却される「競売」に対する言葉です。
通常の売買と同じように売却する相手を探して不動産を売却します。通常の売買と異なるのは金融機関に対して返済額の交渉を売却過程で行なうことです。
競売よりも高く売却できることが多いので流通性がある不動産であれば任意売却をした方が有利です。
②リスケジュール
リスケジュールは省略して「リスケ」と呼ばれたりしています。
一時的に資金繰りが苦しくなった場合に金融機関と交渉して返済額や返済期間を変更し、月々の返済を楽にすることを言います。
③任意整理
任意整理とは、裁判所を関与させないで金融機関と直接交渉をし、借入元金や利息等の返済額の減額等を交渉することを言います。
裁判所を関与させないため秘密にして行えます。
また、弁護士や司法書士に依頼した場合に、受任通知を債権者に発すると債権者は直接取り立てることができなくなるため、債権者からの厳しい取り立てから逃れることができます。
任意整理の場合は債権者全員ではなく、一部の債権者のみと交渉することも可能です。
借入金に関する事故情報に登録されるので5年程度は新たな借り入れができなくなります。
④個人再生
個人再生手続きには「小規模個人再生手続き」と「給与所得者等再生手続き」の2種類あります。通常は小規模個人再生手続きを行ないます。
裁判所が関与して借入金を減額してもらい、3年~5年で返済していくように交渉します。
再生計画を立て計画通りに返済が終わると残りの債務が全て免除されます。
自己破産では債務がゼロになりますが、個人再生手続きではゼロにはならず、減額のみです。
事故情報に登録されるため新たに借り入れができなくなるのは任意整理や破産と違いはありません。