不動産投資の物件の購入を判断する1つの基準として、利回りを見ている方は多いのではないでしょうか。
しかし、多くの物件の販売図面では、表面利回りを記載していても、実際に家賃収入から諸経費などを全部差し引いて、手元に残されたキャッシュから計算する実質利回りの記載はほとんどないでしょう。
今回は、実質利回りの計算方法を紹介していきますので、これから不動産投資を検討されている方に、そのスキルを身につけて頂けたら嬉しいです。
目次
1、不動産投資で知っておくべき2つの利回り
不動産投資で出てくる利回りは、大きく2つあります。
(1)表面利回り
物件の販売図面でよく目にするのは表面利回りではないでしょうか。
表面利回りは、「家賃収入(年額)/物件価格」で計算することができます。つまり、空室、諸経費などは考慮せずに、満室想定した前提で計算した利回りになります。
例えば、家賃収入120万円で物件価格が2,500万円の場合、表面利回りは「120万円/2,500万円=4.8%」になります。
(2)実質利回り
賃貸経営をしていくうえで、管理費、修繕積立金、固定資産税などの諸経費がかかります。
実質利回りは、「(家賃収入−諸経費)/物件価格」で計算します。つまり、実際手元に残されるキャッシュで利回りを計算するのは実質利回りです。
2、実質利回りのシミュレーション
以下にて、具体的な数字で実質利回りのシミュレーションをしてみましょう。
(1)不動産投資で計上できる経費
最初に不動産投資で計上できる経費について知っておきましょう。
中には、不動産投資に全く関係ない飲食代などを計上される方もいますが、基本的には、万が一税務署に調査された時に、きちんと説明ができないといけないので、何もかも無理して経費を計上するのはやめましょう。
具体的には、以下のような費用は不動産投資として認められる経費と言えます。
- 管理費・修繕積立金などの「管理費」
- 固定資産税・不動産取得税などの「税金」
- 地震保険・火災保険などの「保険料」
- 建物・備品などの「減価償却費」
- 壁紙・水道の蛇口、畳などの「修繕費」
- 建物の借入金の「利息」(土地は対象外)
- セミナー・不動産会社などに行く時の「交通費」
- 電話・インターネットなどの「通信費」(全体の3〜4割が1つの目安)
- 管理会社や税理士などの打合せ時の「接待交際費」
- 勉強のための新聞・本などの「自己啓発の費用」
- 確定申告で税理士に依頼した時の「報酬」
(2)実質利回りのシミュレーション
上記にて様々な経費を紹介しましたが、人によって計上する項目や割合が異なることご了承ください。
以下の条件にて実質利回りのシミュレーションをしてみました。
①物件情報
- 物件価格:2,300万円
- 築年数:15年
- 駅から徒歩5分
- 家賃収入:11万円/月
- 礼金:22万円
- 融資金額:2,300万円
- 融資期間:30年
- 金利:1.9%
- 不動産所得合計:1,540,000円
②諸経費
- 管理費・修繕積立金:180,000円/年
- 固定資産税:60,000円
- PM管理費:60,000円/年
- 損害保険料(地震・火災保険):5,000円/年
- 借入金利息: 42,9990円
- 税理士報酬:30,000円
- 交際費などその他経費:20,000円
- 諸経費合計: 784,990円
なお、確定申告の時に、諸経費として「減価償却費」の計上はできますが、実際に出費していない費用になりますので、実質利回りの計算ではこちらの費用は対象外にさせて頂きます。
③実質利回り
①と②のデータを基に、こちらの物件の実質利回りは「(1,540,000円-784,990円)/2,300万円≒3.28%」になります。
一方、表面利回りは「1,540,000円/2,300万円≒6.7%」となっており、ほぼ倍近く高くなっているのが分かります。
利回りのカラクリについて、下記の動画をぜひご覧ください。
3、実質利回りを知ることが大切
基本的には販売図面には表面利回りしか掲載していないケースが多く、表面利回りは高いのに実質利回りを計算したら、表面利回りの1/3になる場合もあります。
(1)新築物件の場合
一般的には新築物件は,家賃は高めに取れますが、物件価格も高いため、表面利回りは比較的に少し低めになっています。
なお、管理費・修繕積立金は安くなっていますが、購入初年度に固定資産税の他に、不動産取得税もかかるため、実質利回りも低くなる傾向が高いです。
(2)中古物件の場合
新築物件と比較して、物件価格が低めの中古物件の利回りは高くなっています。
築年数によって異なりますが、築年数が古くなるにつれ、管理費・修繕積立金は新築時の倍になったりするケースもありますので、表面利回りは高いが、実質利回りは想定外に低くなるケースも十分に考えられますので、きちんと実質利回りを計算することが大切と言えます。
また、新築物件と比較して、空室になる可能性も高いので、空室率もきちんとシミュレーションに入れて計算することが重要です。